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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
原初の大魔法2
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「あ、あの、」
「うん?」
控えめな声に視線をそちらへと向ければ、不安と恐怖と戸惑いの入り混じった瞳が王を見ていた。
「どうした、キョウヤ」
「う、腕の、血が、」
言われ、改めて自身の左腕に意識を向ければ、案の定出血が激しい。それはそうだろう。何せ骨に到達するところまで牙が食い込んだのだ。しかし、男にとってはこの程度であればそこまで慌てるようなことでもないのだが、どうやらこの少年にとっては一大事らしい。その証拠に、彼の顔は真っ青だ。
「ふむ」
愛し子にこのような顔をされるのは好ましい事態ではないのだろう、と。一般常識を想定して判断した王が、それならばと火霊の名を呼ぶ。
「出血を止めたい。傷口を焼き切ってくれ」
途端、だらりと垂れている男の左腕が炎に包まれた。肉の焦げる臭いがしたのは一瞬で、すぐさま炎はほどけ、再び外気に晒された腕を見れば、傷口が焼けて変性した代わりに、もう出血する様子はなかった。
「これで大丈夫だ」
にこりと微笑んで見せた王に少年はますます青くなるのだったが、敵の様子が変化するのを感じて意識をそちらに戻した王は、それには気づかなかった。
「ちょこまかと小賢しいなぁ! 良いからさっさとそれを渡して死ねと言っているんだよ!」
苛立った声が鼓膜を叩き、少年はびくりと肩を揺らした。
「渡せ渡せと言うが、何故お前はそれほどまでにキョウヤに固執するのだ!」
「何故? ははは! 今更しらばっくれるのか? それがエインストラであることくらい、とっくに判っているさ!」
デイガーの言葉に、王は僅かに目を開いてから、少年に向かってそっと囁く。
「……キョウヤ、お前、エインストラだったのか?」
「えいんすとら……?」
そもそもそんな単語自体聞いたことがないというような反応の少年をちらりと見た王が、ふむ、と呟く。
「厄介だな……」
「あ、あの、えいんすとらって何なんでしょうか……」
「エインストラが何者かについてならば、後でゆっくり教えよう。お前が何者なのかについては私も判らないが」
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