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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
原初の大魔法3
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何者もかも何も、少年は人間だ。少しばかり右目がおかしいが、少なくとも母は人間だったし、会ったことはないけれど父だって、話に聞いた限りでは人間のようだった。
「さあ、エインストラ、こちらへ来てください! 貴方が大人しく来てくれるのでしたら、今はその男を殺すだけで勘弁致しましょう!」
デイガーの言葉と共に、ドラゴンの背後に空間魔導の黒い渦が生まれる。これまで散々見てきたものと同じ渦だったがしかし、今回の渦は、徐々にだが確実に広がっているように見えた。
「あの、渦、なんだか大きくなってませんか……?」
「焦って大技に頼ってきたな。つまり、周囲を巻き込んだ大技で片づけざるを得ないほど、グレンの脚が速いということだ。お手柄だぞ、グレン」
こんな状況だというのに、王に褒められた王獣は嬉しそうに吠えた。
「さあ、エインストラ! 共に帝国のために戦いましょう!」
「そうは言うが魔導師よ! そのような大魔導を放っては、大切なエインストラまで空間で捻じ切れてしまうのではないか?」
「何を馬鹿なことを! お前たちの使う魔法ごときでは不可能かもしれないが、魔導ならば選んだ対象を個別に別空間へと飛ばすことも可能! つまり、空間の歪みで千々に引き裂かれるのは、お前たちリアンジュナイルの人間だけさ!」
嘲笑交じりの言葉に、王が目を細める。
「なるほど」
デイガーの話には、十分すぎるほどに情報が詰まっていた。彼が用いる空間魔導は、一度に複数の対象を別空間に飛ばすことが可能で、しかも飛ばす先は対象ごとに設定できる。一度にいくつまで転送先を設定できるかまでは不明だが、少なくとも同時に二か所を設定することは可能で、その内の一つに、身が裂かれるほどに歪みきった空間を含むことができる、と。更に、その効果範囲もある程度予測ができた。わざわざリアンジュナイルの人間と言い切ったところを見ると、避難した民も巻き込めるほどの広範囲に渡って発動する魔導である可能性が高い。そもそも、あのバーの地下にはまだデイガーの部下が残っているはずである。恐らくはそれらと少年をまとめて首都から離れた場所に転送しつつ、残りを全て歪んだ空間で始末する、といったところだろうか。
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