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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
原初の大魔法4
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これは、驚くべきことだった。少なくとも、王が帝国を旅していた十年前には、魔導にそこまでの精度はなかったはずだ。つまり、帝国の魔導はこの十年でそこまで進化を遂げたということである。
(当時から別次元の魔物の召喚にやたらと固執はしていたが、それがある程度形になったことで、使役する魔物の質が急激に上がったか)
ドラゴンの背負う渦がどんどんその大きさを増していく。それに比例して空気全体が重々しい何かを孕み、恐怖からか思わず王の服の裾を掴んだ少年は、ふと、この重い雰囲気にそぐわない優しい風を頬に感じた。
「やれやれ、ようやく準備が整ったか。……良いか、火霊。できる限り手加減はするのだぞ?」
ふぅ、と息を吐き出した王を少年が見上げれば、王の瞳の中の炎が、何故か一層その輝きを増していて。その美しさに、また少年は惚けてしまう。
「帝国の魔導師よ!」
王の凛とした低い声が、空気を震わせた。
「よくぞ魔導の道をここまで極めた。そこに至るまでの努力と執念、察するに余りある。そして認めよう。貴公のその魔導は、ロイツェンシュテッド帝国は、疑いようもなく、円卓の連合国にとっての脅威足り得る」
王を中心に、ぶわりと風が巻き起こる。熱を孕んだそれは、まるで歓喜に踊り狂うように王と少年の髪を揺らした。
「故に、私もこの魔法を以て貴公を排除しよう!」
デイガーの魔導は、確かに脅威的だ。ひとたび発動すれば、いかにグランデル王と言えど、対処には労を要する。増してやこの街や金の国の民を守りながらとなれば、それはもう不可能だ。だからこそ、この魔導の欠点、すなわち、発動までに時間を要する点を叩くしかない。
「――赤より赤き紅蓮の覇者よ」
魔法が何故、魔術よりも、魔導よりも、優れているとされているのか。
「全てを滅ぼす破壊の御手よ」
簡単な話だ。魔法は魔術を凌駕する現象を引き起こすことができ、魔導のような複雑性もない、簡素な体系で構成されている。それ故に、魔法は時に言葉ひとつで驚異的な威力を発することができるのだ。そう、つまりは、何よりも速く、何よりも強大。それだけのことだった。
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