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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
原初の大魔法5
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「汝が子らの声を聴き 祈りの唄に答えるならば」
王の周囲から、炎が噴き上がる。それは、圧倒的な魔力の奔流だった。始まりの四大国の王が持つ、莫大な力の顕現だった。
「我に抗う全ての愚者に 滅びの道を歩ません」
朗々たる王の詠唱に、デイガーが目を見開く。彼はこの魔法を知っていた。そうだ、知らないはずがない。この魔法こそ、五年前の大陸間戦争において大量の帝国軍を焼き払った業火にして、原初の大魔法がひとつ。
「ば、馬鹿な!? そんなものを使えば、この首都も無事では済まないはずだ!」
だからこそデイガーは、グランデル王がその手段を取ることはないだろうと、そう確信していた。しかし、
「麗しき 青き衣の乙女も殺し――!」
王の詠唱は止まらない。その身から迸る魔力はいよいよその勢いを増し、デイガーの目に、そして、少年の異端ではない左目にさえ、炎のように爛々と輝く魔力の奔流が見てとれる。魔法適性のない人間までもが見ることができるほどの密度の高い魔力を、惜しげもなく溢れさせ、緋色を纏う炎の王は、高らかにその勝利を叫んだ。
「――――“森羅万象焼き滅ぼす炎”《グラン・フレア・フラメス》!」
瞬間。王の全身から噴き上がった魔力の濁流が炎となってドラゴンへと放たれた。凄まじい熱量を伴い吹き荒れるそれは、まさに炎の嵐そのもの。ドラゴンが展開した空間の渦のことごとくを容易く破り、炎が波のように竜へと押し寄せる。強固な鱗を焼き溶かされ、ドラゴンが苦痛に濡れた悲鳴を上げた。
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