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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
合流8
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「ほんっとうにしょうがない人ですね……」
呆れたような声を聞き流して、レクシリアは少年の前に膝をついた。
「まずはそのナイフを抜かなければなりません。どうなさいますか?」
見上げてきた宰相の顔が美しくて、少年は思わずじっと彼を見てしまった。
(綺麗な人だな……)
ぽやっとした表情で見つめてくる少年に、レクシリアがにこりと微笑む。
「私の顔に何かついていますか?」
「え、あ、いえ、なんでもないです。すみません……」
「別に何も悪いことなどないのですから、謝らないでください。それよりも、そのナイフはどうなさいますか?」
「あの、どう、とは……?」
首を傾げた少年の疑問に、王が答える。
「自分でナイフを抜くか、誰かに抜かせるか、という話だ」
王の言葉に、少年がまた青褪める。確かに、抜かないで回復魔法を使えば、肉がナイフを巻き込んだ状態で治癒してしまうのだろう。だが、だからといってこれを抜くというのは、なかなか勇気のいる話だった。
「……じ、自分で、やります」
ものすごく嫌だったけれど、それでも他人にされるよりは自分でする方がまだ良いと思った。
「では、ご準備を。ナイフが抜け次第、回復魔法をかけます」
「……はい」
そう返事をした少年だったが、いざ抜こうと思うとやはり勇気が出ない。ナイフの柄に指をかけたは良いが、その手は震えるばかりで一向に動く様子はなかった。
「大丈夫だ、キョウヤ」
少年を後ろから抱き込むようにして、王がナイフを握る少年の手に己の手を重ねた。急に触れた体温に驚いた少年が過剰なほどに身体を跳ねさせたが、王に気にした様子はない。
王をちらりと見たレクシリアは、少年の傷口に手を翳した。
「風霊、水霊。可能な限りこの子の痛みを和らげてあげてください」
レクシリアがそう言うと、ずきんずきんとした鈍い痛みがすっと消えた。どうやらこの宰相は、回復魔法に精通しているらしい。
「ゆっくりで良いから、引き抜くぞ。なに、レクシィの魔法がかかっている今ならば、そうそう痛むことはない」
そう言った王が、少年の手を包んだままそっと腕を動かす。驚いたことに、王の言葉通りほとんど痛みは感じなかったが、傷口を塞ぐものがなくなれば、当然血液が溢れて出くる。思った以上に流れ出るそれに少年が顔を強張らせると、やはり王が宥めるように、大丈夫だと言ってくれた。
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