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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
合流9
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一方のレクシリアの処置は迅速かつ的確だった。ナイフを抜いている途中で詠唱をはじめ、完全に抜け切るタイミングを見計らって魔法を発動させる。
「|癒しの雫《キュア・レイン》」
詠唱を終えると同時に、怪我を負っている少年の腿と王の左腕に細やかな光の粒が降り注ぐ。そして、光の粒が肌に染み込むように消えたそばから、驚異的な速度で組織が再生されていった。粒が完全に消えるころには、少年の傷は跡形もなく完治していて、少年は驚いて自分の脚をまじまじと見た。
と、目の前の美丈夫の身体がぐらりと傾いた。そのまま後ろへ倒れ込みそうになったレクシリアを、グレイが心得ていたように支える。
「お、もっ……!」
上背がある上に体格も良いレクシリアを支えるのは、どちらかというと細身のグレイには少々荷が重かったようだ。
「やはり昏倒してしまったか」
「やはりじゃねェんだよクソポンコツ野郎。……で? そっちのお方は完治したようですが、王陛下の腕の調子はいかがですか?」
言われ、王がすっかり綺麗になった左腕を軽く動かしてみる。
「……表面上は完治しているように見えるが、万全ではないな。痛みもまだそこそこ残っている。まあ、レクシィの残存魔力を考えれば、十分すぎるほどだ」
「そりゃ、この人ですから。……でもだからといってこの人に迷惑ばっか掛けてんじゃねェぞ」
低くなった声に、しかし王は朗らかに笑っただけであった。
そんなやり取りを見ていた少年の方は、傷が治ったというのに、相変わらず青い顔をしている。それはそうだろう。庶民の自分を治して一国の宰相が倒れるなど、畏れ多いにもほどがある。
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