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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
金の王3
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赤の王の斜め後ろで黙って話を聞いていた少年は、“黎明”という単語に内心で首を傾げた。だからといって、王二人とその臣下が会話をしているところに割って入る気もなければ勇気もないし、そもそもこの場に存在していること自体が畏れ多くて胃が痛くなりそうだったのだが、何故だか少年の疑問に気づいてしまったらしい赤の王が少年を見下ろした。
「“黎明”というのは、グレイがギルヴィス王から授かった冠位錬金魔術師の称号だ。冠位錬金魔術師は知っているか?」
「え、あ、いえ、知らない、です……」
「錬金魔術師の中でも特に優れていると認定された二十人には、ギルヴィス王より冠位と称号が与えられるのだが、そうなった者のことを冠位錬金魔術師と呼ぶのだ」
「……じゃあ、グレイさんって、とってもすごい人なんですね……」
あまりにも自分とはかけ離れた話に、少年はただ感嘆することしかできなかった。
「つっても、オレはまだ末席である二十位だけどな」
「おや、その歳で冠位に至っていること自体、とても素晴らしいことですよ」
そう言ったギルヴィス王に、グレイは複雑そうな表情を浮かべた。
「オレよりも幼いのに遥かに優れている錬金魔術師に言って頂いても、素直に喜べません」
「ふふふ、貴方は相変わらず負けず嫌いなのですね。……しかし、そもそも何故ロステアール王がこのような時期にギルガルドに?」
ギルヴィスの当然の疑問に、赤の王はにこりと微笑む。
「帝国の策略で盗まれてしまった私物を探しに来てな」
「私物、ですか。わざわざ帝国が盗むとなると、重要な物でしょうか?」
「いや、そのようなことはない。レクシィは頭を抱えていたようだが、所詮はただの被り物だからな」
その言葉に何かを察したらしいギルヴィスが、ライデンの上のレクシリアにちらりと視線を投げる。
「……なるほど、それはまた重要な物を盗まれたのですね……。宰相殿の心中、お察し致します」
「ははは、何のことかな」
笑ってみせた赤の王に曖昧な微笑みを返してから、ギルヴィスは視線を少年へと向けた。
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