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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
金の王5
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「それではまず、あの少女を避難所まで届けてやらねば」
「それでしたら、こちらでお引き受けしましょう。ヴァーリア」
ギルヴィスの言葉に、ヴァーリアと呼ばれた師団長が心得たように前へ出た。赤の王やレクシリアほどではないが、鍛えられた立派な身体の彼は、赤の王獣に深く頭を下げて礼を示してから、その背で眠っている少女を抱き上げた。そして再び王獣に一礼をした彼は、次いで赤の王にも頭を下げた。
「我らが不甲斐ないばかりに、ロステアール王陛下には多大なご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。この子を含め、多くの国民の命を救って頂きましたこと、深くお礼申し上げます」
「これはまた、随分な謙遜だな。貴公の武勇は我がグランデルにも響いているぞ、カリオス・ティグ・ヴァーリア師団長。貴公が自由に動けたならばあるいは、あのドラゴンを牽制することもできたのではないか?」
顔を上げたヴァーリア師団長は、その濃い赤の瞳に少しだけ困った色を浮かべて苦笑をした。
「それは少々私を買いかぶりすぎです」
「果たしてそうだろうか。貴公の腕ならば、十分にあり得る話だと思うが」
至極真面目な王の言葉に、師団長は再び深く頭を下げた。
「お褒め頂き恐縮です」
「いや、褒めたつもりはない。事実を言っただけだ」
そう言ってから、王が所在なげに地面を見つめていた少年を抱き上げる。相変わらず突然のことに、少年の喉からはやはり情けない声が出た。
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