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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
金の王10
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そこまでの流れをぼうっと眺めていた少年は、部屋に残った面子を改めて認識して、グレイと一緒に出て行けば良かったのではないかと今更ながらに思った。いや、グレイだって多分高貴な人のようだし、一緒にいて居心地が良いわけがないのだが、それでも今の状況よりは幾分か良かっただろう。
隣に赤の王、正面に金の王。とてもではないが、一般庶民の少年が存在して良い場所ではなかった。
内心でおろおろしている少年をよそに、至極真面目な表情をしたギルヴィスが、赤の王を見据えて口を開いた。
「ロステアール王、率直にお尋ねします。キョウヤさん、でしたね。彼は何者なのですか?」
何者もなにも、ただの一般庶民である。
「ふむ。何者か、ときたか。失礼ながら、その質問の意図をお聞かせ願おうか」
「ロステアール王が深く関わり、お守りした方です。ただの一般市民であるわけがない。可能であれば、私にも教えてください。彼がギルガルド国民ならば、私には王として彼を守る義務があります」
「……と、言われてもな。そもそも、キョウヤが連中に狙われるきっかけを作ったのは私なのだ。私のせいで危ない目にあってしまったのだから、それを守るのは当然のことだろう」
「そのお言葉は尤もだと思います。しかし、本当にそれだけですか?」
ギルヴィスの言葉に、彼をまじまじと見た赤の王は、次いで笑みを深めた。
「いや、やはりギルヴィス王は優秀な王だ。その歳にして人の心の機微を読み取れるとなると、末恐ろしいな」
「え、あ、いや、そのような、……ありがとうございます」
急に褒められて驚いたのか、ギルヴィスは真剣な表情を崩して照れ笑いのようなものを浮かべた。
「貴殿の言う通り、それだけではない。いや、恥ずかしい話なのだが、私はキョウヤに惚れていてな。愛した子を守るために必死だったのだ」
この期に及んでまだそんなことを言っているのかこの人、と思った少年だったが、勿論口にはできないので黙っている。しかし、こんな話をギルヴィス王が間に受ける訳がない。ギルヴィス王はまだ幼いが、民からは名君であると尊敬されているお人だ。そんなお方がこんな世迷言で納得するなど。
「なんと! 想い人なのですね! それはおめでとうございます!」
(納得、しちゃった……)
呆然とする少年をよそに、ギルヴィスは何故だか知らないがとても嬉しそうだった。
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