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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
円卓会議6
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「グランデル王よ。それは浅慮の極みというものだ。今回は偶然うまく事が運んだのかもしれぬが、次にそうなる保証はない。聞けば貴様、ギルディスティアフォンガルド王国にて極限魔法を使ったそうだな。それがどれほどまでに愚かな行いかは判っておるのか? それとも、ギルディスティアフォンガルド王国に侵略し、蹂躙する心づもりだったのか?」
「エルキディタータリエンデ王! グランデル王はそのような、」
「黙れ小童!」
ビリビリと鼓膜を震わせる怒声が部屋に響いた。銀の王の余りの気迫に、赤の王を弁護しようとした金の王が口を閉じる。
鋭い目に睨まれた赤の王は、その目をまっすぐ見返した後、深々と頭を下げた。
「大変申し訳ないことをした。私自身、此度の一件は丸く収められたとは思っていない。浅慮が過ぎたこと、改めて謝罪申し上げる」
「……ふん。今後はより一層謙虚に生きることだな。所詮貴様はくすんだ赤。一国を担える器ではない」
銀の王が放ったひとことに、金の王がその美しい顔を怒り一色に染めて立ち上がろうとした。赤の王を慕う彼は、もうこれ以上は我慢ならなかったのだ。くすんだ赤とは、グランデル国王に対する最も卑劣な蔑称である。歴代の王の鮮やかな赤髪とは違う赤銅の髪を嘲笑い、下賤の血が混じった出来損ないだとあげつらう、最低最悪の言葉だ。
しかし、椅子を蹴る勢いで立ち上がろうとした金の王の肩を、橙の王が押さえて止める。金の王が紅潮しきった顔を隣へ向ければ、彼を押さえている橙の王は、肩を竦めてみせた。つまり、我慢して大人しくしていろということらしい。
隣国の王に諫められたからと言ってその怒りが収まる訳ではなかったが、それでも少しだけ冷静さを取り戻した金の王は、深く息を吐き出して呼吸を整えた。次いで頭を下げている赤の王を見れば、赤の王は金の瞳をちらりと彼に向け、僅かに目を細めて笑って寄越した。
赤の王のその行動に、金の王はまた感嘆してしまう。彼の王は、このような侮辱を受けても毅然とし、怒る様子すら見せはしない。それどころか、まだ幼いが故に感情が表に出てしまいがちな自分のことを気遣い、安心させるように微笑んでくれさえするなど。
「……やはり、ロステアール王は素晴らしいお方だ」
そっと紡がれた吐息のような呟きに、橙の王は小さな肩を掴んでいた手を離して、残念なものを見る目で少年王を見たのだったが、金の王がそれに気づくことはなかった。
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