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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
円卓会議10
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へらっとした軽薄な笑みを浮かべながら言った黄の王だったが、自分の発言に銀の王の目が鋭さを増したのを目端に捉え、そちらに視線をやる。そして、二人の視線がぶつかると同時に銀の王が口を開いた。
「若造が知った風な口を利く。弱小国を憐れむ体ではない。実際に憐れんでおるのだ」
「だーかーら、そういうのを改めた方が良いって言ってるんでしょうが。少なくとも今は昔とは違うんだ。帝国だって日々成長しているし、もしかすると奴らがリアンジュナイルを越える日だって来、」
黄の王が言い切る前に、その眼前で凄まじい水蒸気が発生した。
しかし、突然のことに驚いて目を丸くしたのは金の王のみで、他の王は表情の変化こそあったものの驚いた様子はない。それを認識してから、遅れて金の王は理解した。
銀の王が黄の王に向けて放った水霊魔法を、赤の王の火霊魔法が相殺したのだ。それを証拠に、赤の王の左手には炎の精霊の気配が纏わりついている。
「エルキディタータリエンデ王。同じ円卓の王に手を上げるとは、何事か」
赤の王の落ち着いた声が、緊迫に満ちた空気を震わせる。
「そこの痴れ者が、神に選ばれしこの聖域を穢すような発言をしようとしたのでな。年長者として頭を冷やす手助けをしてやろうと思っただけだが?」
「エルキディタータリエンデ王ともあろうお方が、歴史書の記録をお忘れか。円卓の国王同士の争いは、神が認めるほどの大義名分がない限りご法度だ。そして我らに神の基準が理解できぬ以上、このような行動は控えるべきではないかと進言する」
玉座についてまだ日が浅い金の王でも、赤の王が言う記録のことは十二分なほどに知っていた。確かあれは、四千年近く前の記録だっただろうか。橙の王と緑の王がいがみ合った結果、国家間戦争になりかけたことがあったらしいのだ。しかし、寸でのところで両国の王獣がそれぞれの国王の喉笛を噛み切って殺したことにより、戦争は起こらずに済んだとか。以降、王が道を誤ったときには、神に代わり、王獣がその牙を以て粛清する、という伝承が残っているのだ。
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