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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
円卓会議11
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しかし、この神の代わりという一文が厄介なのである。赤の王が言った通り、神の意向は人間には判らない。神が王として不適であると判断した瞬間に王獣による制裁が起こるのだとしたら、その基準を知ることは不可能だった。実際、数千年の歴史を辿れば、円卓の国同士で戦争を起こしても王獣の粛清が起きなかったケースも存在するらしい。だが、そもそも円卓の国同士で戦が起こること自体が稀であるため、何が正しい情報なのかも定かではなかった。だからこそ、国王たちは互いに互いを不可侵であるとし、どんなに仲が悪くとも舌戦に留めるのが常だった。
もっとも、当代の赤の王と青の王のように致命的に不仲であった場合、この程度の軽い魔法の応酬ならばあるにはある。よって赤の王の発言は、銀の王への非難が込められた少々大げさなものであった。そしてそれを心得ている銀の王は、赤の王の忠告に鼻で笑って見せたのだった。
「これはこれは。庶子が私に進言を寄越すとは、偉くなったものよ。しかしどうにも頭の弱さが露呈しておるのが残念な限りだ。私は飽くまでもリィンスタット王の茹だった頭を冷やしてやろうとしただけ。それで国家間戦争の話にまで発展させるのは、なかなかどうして論理の飛躍だとは思わんかね?」
「これは失礼した。しかしながら、私にはリィンスタット王が頭を冷やす必要はどこにもないように思える。貴殿らがどう思うかは判らぬが、帝国は魔導を以てリアンジュナイルの魔法を越える気だ。彼らがそれを成し遂げる可能性を考慮に入れるべきだというリィンスタット王の発言は、実に的を射た意見だと思うが」
「それが愚の骨頂だと言っておる。魔導が魔法を越えることが有り得ぬように、帝国がリアンジュナイルを越えることは有り得ぬ。並ぶことすら叶うまいよ。リアンジュナイルは神が選定した聖なる地。数多の次元の中で、最も原初にして神の息吹がかかりし大地がひとつ。故に、我らが負けることはない。これは創世の神が決定した絶対的な事実である。人の手で変えられるものではない」
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