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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
円卓会議19
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「場合によっては私の過去視も必要になろう。ギルディスティアフォンガルド王の未来視もな。尤も、そこな幼王の未来視は安定しておらぬようだが」
若干の皮肉を含んだ声に、金の王は素直に浅く頭を下げた。
「申し訳ありません。私の未来視がもっと意識的に引き出せるものであれば、皆様のお役に立てたというのに」
「いいや。ギルディスティアフォンガルド王の未来視は、元より制御不可能なもの。あれは必要なときのみに発動する能力だ。貴殿が気に病むことはあるまい」
赤の王が言い添えたが、銀の王はやはり冷たい目で幼い王を見た。
「それを考慮したとしても、当代の先視が発動する頻度は低いようだがな」
その言葉は、紛れもない事実である。唇を噛み締めた金の王は、しかし顔を上げて銀の王を真っ直ぐに見た。
「仰る通りでございます。それも、全て私が未熟であるからこそ。より一層の研鑽に励み、必ずや我が国とリアンジュナイル大陸のお役に立ってみせます」
「……ふん。未来視は研鑽でどうなるものでもない。しかし、お主が成長すれば少しはまともになろう。寧ろお主は、より王としての己を磨くことに専念すべきであろうな。国王とは民を守護すべき存在だ。ひとりひとりの民を尊重し、その未来のために尽くすのが王だ。故に、先のように、ひとりの民を尊ぶ崇高な精神は評価に値する。……だが、発揮する場所を誤ってはならぬぞ。必要であれば、百を救うために十を、千を救うために百を斬り捨てる。その判断を一切の迷いなく下すのも、また王なのだ。お主も王であるというのならば、そのこと、ゆめゆめ忘れてはならぬ」
そう言った銀の王の目は、相変わらず鋭さがあるものの、そこに常のような嘲りの色はない。そのことに困惑しつつも、金の王は深く頷いた。銀の王の言わんとしていることは、よく判っている。きっとそれは正しく、そして必要なことなのだ。そして、幼い自分ではまだその重荷を背負いきれないことも、金の王はよく判っていた。
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