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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
国王の招待3
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しかし、どうにも気が抜ける国王陛下だ。相手が国王であると判っているのに、少年がそこまで緊張感を持てずにいるのは、この寝ぼけた熊のような雰囲気がさせているのだろうか。
高貴な方でありそうな気はするし、威厳だって感じるには感じるのだが、どうにもそれらは、こちらの緊張を煽るような種類のものではないのだ。金の国の王と会話をしている最中のこの王にはもっと恐れ多いようなものを感じたのだが、話し相手が違うだけでこうも変わるものなのだろうか。
「そんな訳なので、急いで戻ろう」
「あ、はい。どうぞお気をつけて」
何しに来たんだこの人。そう思った少年だったが、もしかするとあの事件の関連でやり残したことがまだあったのかもしれないと思い直す。きっとそうだ。それ以外に、わざわざ臣下に迷惑をかけてまでこの国にやってくる理由など浮かばない。
取り敢えず形式的に一礼して旅路の無事を願う台詞を返してから、少年は窓を締めようと手を伸ばした。こんな夜中に訪ねてくるものだから、冷たい風が部屋に入ってきてすっかり身体が冷えてしまった。これは布団に入る前にホットミルクでも飲んだ方が良いかもしれないなぁ、などと考えていると、窓に伸ばした手を握られた。
予期しない接触に盛大に肩を跳ねさせた少年が王を見れば、何故だか王がにっこり笑っている。いや、記憶にあるこの人は大体いつもにこやかだったけれど。
(あ、やっぱりこの人、とってもきれい……)
優しげな金の瞳に見つめられて、少年がとろんと表情を蕩けさせる。その様を見て笑みを深めた王が風霊の名を呼べば、少年の身体がふわりと浮いた。
「へっ!? あ、あの!?」
優しい風に攫われ、少年の身体はあれよあれよという間に窓の外へ押し出されてしまう。思わず自分の手を握る王の手に縋れば、そのまま引き寄せられて、少年の身体は王の足の間にすっぽりと収まってしまった。
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