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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
エピローグ8
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少年が王の言葉ひとつひとつに感じているそれは、間違いなく恐怖そのものだ。何故なら少年は、思い知らされてしまった。王の言葉はやはり、心からのものであると。嘘偽りのない真実であると。だって、こんなにも美しい人なのだ。この人の紡ぐ、真っ直ぐすぎるほどの言葉が嘘だとしたら、きっとこの世に真実なんて存在しない。
「……ぼ、く、」
貴方の愛は受け入れられないと。受け入れてはいけないのだと。そう言うべきだし、言わなければならない。愛されることで至高の美しさを損ねてしまうかもしれないという恐怖が、早く拒絶しろと少年を責め立てる。けれど彼には、そうすることができなかった。
「愛しているよ、キョウヤ。誰よりも何よりも、お前のことを、こんなにも愛している」
「……っ、」
きっと、王が今差し出している愛情は、少年が幼い頃からずっと求めてきたものに似ている。だからこそ、拒絶しきれない。それを甘んじて受けることはできないけれど、だからといって、いらないとも言えなかった。
だが、それでも拒絶しなければならないのだ。目の前の美しさが損なわれてしまう前に、早く。
全身の血が凍るほどの恐怖に晒された少年が、震える唇を開こうとしたとき、そっとそこに、温かな何かが触れた。
それが王の唇であると気づくのに、どれだけの時間を要しただろうか。だが、口づけの時間自体はそれほど長いものではなかった。呆気にとられた少年が目を丸くしている間に離れていったから、きっと瞬き二回分ほどの時間だ。
「そう難しく考えるものではないぞ、キョウヤ。私がお前を愛したからといって、何が変わる訳でもないのだ。ああいや、変わるには変わるな。私が幸せな気持ちになれる」
拒絶を紡ぐはずだった唇は、先程の王の体温がまるで火傷のように残っていて、うまく動かすことができない。
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