アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-5-
-
「まぁ、染谷はそういうことをお前には言わないだろうな」
「何でですか?」
「性格上、あいつは誰かに頼ることが苦手だ。頼ることで相手の迷惑になるんじゃないかと思っている。だからあいつは人より努力し、何でもできるようになろうとする。まぁ、それでよくから回ったことをするがな。
それと、あいつとお前はまだ俺と梓ほどの関係じゃない。染谷自身、まだ昔の恋の決着がついてない。だから優先順位はお前より咲坂兄の方が上だ。
お前は今のところ『咲坂兄の弟で俺を抱いた男』で止まったままだ。そんな奴に自分の私的なことを言うわけないだろう」
「…」
そう言われてしまえばそうだ。俺が一方的に好きなだけで、空邪さんはまだ俺と同じ気持ちではない。そんな人に頼めるほどの人ではないことは知っている。
「でもそうは言ったが、少しずつあいつも変わってきている。最近、気にしなかった携帯を俺に内緒で確認したりするしな」
携帯を確認する?それがなんだっていうんだ?
人付き合いの多い仕事なら、仕事のことで連絡が来る。それを確認するために携帯を見るのはおかしくないだろう。
「どういう意味ですか?」
「そこは自分で考えろ。そろそろ仕事に戻る」
清水さんは去っていった。
『少しずつあいつも変わってきている』
それは空邪さんが兄貴から立ち直ってるってことだよな……
少しずつ前へ進んでいく空邪さん。それに比べて俺は……
梓の恋を引きづってるわけではない。空邪さんのことを本気で好きだと思っている。
でも成人したとはいえ、俺はまだ子供だ。昔の過去を引きづったまま。
もういい加減忘れなければいけないのはわかっている。好きでもない女のことなんか。あの男のことなんか……
でも初恋はいつまでたっても忘れない。それが衝撃的なことならなおさらだ。
ブーッブーッ……
「もしもし……」
『とあか?』
電話越しに聞こえてきた声。
「空邪さん……」
俺が今一番会いたい人。
『ん?どうした?』
「え?」
『……いや、なんでもない。純佑様から聞いた。直接話がしたい。今から時間あるか?』
「はい……」
『……じゃあ、今からそっちに向かう。伊織先生の診療所で』
「わかりました。待ってます」
ブチッ……
通話が切れ静まる部屋。でも外は雨音で騒がしい。
あの日も雨が降っていた。雪でも降るんじゃないかってくらい寒くて……
窓に映る自分の顔。窓に映る部屋のベッド。
思い出すあの光景……
『……ハッハッ……』
『…んンッ……好きッ……はやてッ……』
俺の初恋の相手は2つ上の女の先パイだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 289