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椿香水
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ところが次の日、椿原は学校を休んだ。ヒートが来たらしい。思わせぶりなこと言っといて、なんてかっこわるいやつなんだ。
椿原がいないと1日の面白さが格段に減る。授業が終わったらとっとと帰宅しようと思ったけど、俺は運動場に来てしまっていた。
もちろん、佐瀬を見るためだ。無策の状態で佐瀬に近づいても、蜂谷に刺されて終わりだ。でも遠くから眺めるくらいならいいだろう。
今日の佐瀬は運動場をぐるぐると走っている。風を受けて髪がさらさらと流れている。爽やかでかっこいい。汗かいてるのも、なんかエロ…
「あれー?何してるの?こんなところで」
「うわぁ!」
完全に油断している状態で肩をたたかれて、思わず大声を出してしまった。
声をかけてきたのは蜂谷だった。昨日と同じ、可愛いのに敵意をびしびし感じる笑顔で俺を見ている。
「お、お前こそ、何してるんだよ」
「僕?僕は陸上部のマネージャーだから」
「へええ…」
マネージャー…似合いすぎてムカつく。
「用がないなら帰りなよ。練習の邪魔だよ」
「見てるだけだ。邪魔してない」
「えっ、邪魔だよ?そこにいるだけで目障りだよ?」
「難癖つけやがって!お前のがよっぽど目障りだ!」
「はああ?こんなにプリティな僕にお前ごときが何言ってるの?」
「どこがプリティだよ」
少し揉めそうになっていたら、誰かが近づいてきた。
「蜂谷、どうしたの?」
「あ…」
佐瀬だ…!
遠くからしか見たことがなかった佐瀬が、急に近くにいる。タオルで汗を拭いてて、めっちゃ爽やか。すごくイケメンとかではないけど、澄んだ瞳と鍛えられた体のアンバランスがなんかぐっとくる!
「翔也ー!ごめんね心配かけて。この人が陸部をじろじろ見てたから、どうしたのかなって声をかけてみたとこなの」
蜂谷はさっきまでの態度とは全然違う、かわいこぶった様子で佐瀬に答えた。
このぶりっこ野郎め。
「えっと…」
佐瀬は俺を見て爽やかに笑った。
「川名くん、だよね?」
「えっ?!俺のこと知ってるの?」
「同じ学年だもん。俺、人の顔と名前、覚えるの得意でさ」
…なんだ。俺が特別なわけじゃないのか。
佐瀬はわくわくした表情で、俺に一歩近づいた。
「川名くん、もしかして陸上に興味あるの?」
「あ…うん。体動かすのは楽しそうだね」
嘘ではない。嘘ではないぞ。俺も運動したいとは思わないけど。
「ほんと?嬉しいな。よかったら一緒に走ろうよ!」
佐瀬は目をキラキラさせて、俺の手を握った。
「ん?んふふ…」
初対面で手を握られるなんて、ラッキー以外の何物でもない。パーソナルスペースの狭さ、バンザイ!
喜んでいたら、蜂谷に引っ張られ、強制的に離された。目が怖い。
しかしこのタイミング、チャンスなんじゃないか?佐瀬は俺にそんなに悪い印象を抱いてはなさそうだし、頑張って頼めば性奴隷にしてもらえるかもしれない!
「あのさ、走るのもいいけど、佐瀬にちょっと頼みたいことがあって」
「なに?」
「俺を佐瀬の性ど」
「川名!!」
佐瀬の性奴隷にして下さい!という渾身の訴えは、俺を呼ぶ声でかき消された。
「ツバキ?今日学校休んだんじゃ…」
振り返ると、椿原が息を切らせてこちらに走ってきた。
「いや、休んでたんだけど、完成して…あれ?」
椿原はそこでやっと佐瀬と蜂谷の存在に気づいたらしく、不思議そうな顔をしている。
「もう仲良くなったの?」
「うん。俺たち今仲良くなったんだ」
そう宣言して2人を見ると、蜂谷は嫌そうに顔をしかめ、佐瀬はまるで会話を聞いていない様子でストレッチをしていた。
「とてもそうは見えないな」
「翔也ー、もう行こうよ。こんなとこでストレッチしてないでさぁ。あっちで僕が手伝ってあげるから」
蜂谷は椿原を無視して、甘えた口調で佐瀬に話しかけた。
「あ、うん。じゃあね、川名くん!…と、小涌谷くんだっけ?」
「えっ?小涌谷?俺のこと?」
椿原は怪訝そうに聞いた。
「うん!俺顔と名前覚えるの得意なんだー」
佐瀬は誇らしげに胸を張った。なんだか可愛い。馬鹿可愛い。
「全然違うし。俺、椿原」
「つばき…なんだっけ?」
「つばきはら」
「つば…えっと…」
「え、何こいつ」
椿原は呆れた顔で俺を振り返った。
「ごめん…5文字以上の名前って難しくてさぁ」
佐瀬は申し訳なさそうに手を合わせている。
αのわりに頭がよくないと噂で聞いてたけど、αとか以前の問題じゃないか?
「つばなんとかくん、下の名前はなんていうの?」
「凌だけど…」
「じゃありょーくんで!バイバイ!」
佐瀬はにこっと笑って走り去っていった。その後を蜂谷が追いかけている。
「ずるいぞりょーくん…」
恨みのこもった目で椿原を見ると、椿原はにやっと笑った。
「お前も難しい名字だったらよかったのにな」
「くそー!川名の覚えやすさが憎い!」
「ところでほら、完成したよ」
「え、なにが?」
椿原はカバンから香水のようなものが入った瓶を取り出した。太陽を反射して、キラキラと光る液体。
「これをかけると、お前はΩの香りを身に纏うことができる」
「は?!」
思わず瓶を奪い取ってかいでみると、強烈な甘い匂いが鼻を直撃した。
「ぬうっ?!なにこれ、クラクラする…」
「おい勝手にかぐなよ」
「なに?どこで手に入れたの?
「これは俺のヒート中の体液から作った」
「はあっ?!」
びっくりして思わず落としそうになった。
「つ、つまり、俺にツバキの精液を浴びろと…?」
「聖液な」
「うるせえ!」
「まあまあ。さすがに精液そのまま入ってるわけじゃない。俺が研究に研究を重ねて作った特製ブレンドだよ」
「お前暇なの?」
「とにかく試してみろって。これをつければαなんてイチコロだよ。さすがに川名を性転換させることはできないけどさ、フェロモンだけなら完全にΩになれるはずだから」
「はあ…ありがとう…」
めちゃくちゃ不安だけど、これで佐瀬の性奴隷になれるならまあいいか…。
香水を受け取ると、椿原は満足そうにうなずいた。
「ところでツバキ、どうして俺のためにここまでしてくれるんだ?」
「ん?まあ…川名は実験台だから」
「え、不穏な響き」
「この香水将来商品化したいからさ、お前で使い心地をチェックさせてくれ」
「おい、これ本当に大丈夫なのか?」
「それはお前が確かめるんだ!」
「不安しかない」
でも効果があったら俺は佐瀬とセックスできるかもしれないんだよな。それなら賭けるしかないだろう!
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