アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
文通とノーベル賞
-
とりあえず、佐瀬も楽しみにしてるという手紙を書いてみることにした。
手紙の書き方なんてよくわかんないけど、佐瀬への思いを伝えつつ、返事が来るように疑問形で終わらせてみることにした。ついでに、仮に蜂谷に見られても怒られないような文面で書かないと…と考えた末、こんな感じになった。
『佐瀬へ
先日はどうもありがとう。
いきなりだけど、
どんなお菓子が好きですか?
練習して
いつか佐瀬にプレゼントしたいな。
川名』
文章が不自然に感じるかもしれないけど、これはわざとだ。縦読みで「せいどれい」を仕込んだのだ!
…まあ、佐瀬は気付かないだろうけど。
それにしてもこの手紙は完璧だ。疑問形で終わらせるどころか、また今度お菓子を作ってきて渡すという約束まで取り付けている。これで佐瀬との仲も深まるに違いない。
しかし数日後、下駄箱に入っていた佐瀬からの返事を見て、俺は驚き呆れた。
『おれはプロテインが好きだよ!』
「プロテインはお菓子じゃねぇ!!」
「あははは」
あまりに衝撃を受けたから、椿原に佐瀬の手紙を見せると、椿原はけたけたと笑った。
「川名も佐瀬も馬鹿だなー。いいじゃん、プロテイン。今度作ってあげなよ」
「タンパク質なんか作りたくない」
完璧な手紙だと思ったのに、どうやらダメだったらしい。縦読みは椿原にすら気付かれていない。もっと踏み込んだ内容にしてみるべき?
そう思ってまた新しい手紙を書いてみた。
『佐瀬へ
いつも陸上頑張っててかっこいいね。
佐瀬はどんなタイプの人が好みですか?
川名』
こっぱずかしいけどかなりストレートだ。あの佐瀬がどんな返事をするのか気になるし。
…そして、返事を読んだ俺は落胆した。
『ありがとう!川名くんも走ろうよ!』
「どスルーじゃん。佐瀬、完全にシカト」
椿原はにやにや笑っている。美形のにやにやはとてもムカつく。
「佐瀬はすぐ一緒に走りたがる」
「走ってやれよ」
「走ると疲れるじゃん」
「うん」
「疲れたらセックスできないじゃん」
「川名はすぐにセックスしたがる」
「なーツバキー、なんて書いたらいいと思う?どうしたらもっと仲良くなれるような手紙になるんだろう?」
「はあー?自分で考えなよ…」
そう言いつつも椿原は首を傾げ、何か考えてくれている様子だ。
…が、すぐ投げやりになって言い放った。
「んー、やっぱ、ちまちま手紙書いてても進まないんじゃない?」
「全否定だと!」
仕方ない。もはやここは正直に、佐瀬に聞いてみるしかない。
『佐瀬へ
もっと佐瀬と仲良くなりたいんだけど、何を書いたら仲良くなれますか?
川名』
…これはちょっと、気持ち悪いだろうか。ていうか、馬鹿みたい?でも佐瀬は優しそうだし鈍感そうだし、案外素直に教えてくれるかもしれないし…。
そして、佐瀬の下駄箱に投函してから3週間ほど経った。返事はまだない…。
「だめだ。今日も来てない」
朝、いつものように椿原と登校し、下駄箱を開けため息をつく。
「文通ごっこに飽きたんじゃない?」
椿原はどうでもよさそうにそう言って、すたすたと歩いていってしまった。
「えーっ……まあたしかに、あんまり面白いことは書けなかったけどさ…」
すぐに立ち去る気になれず、ぼーっと下駄箱を見つめていると、突然声をかけられた。
「かーわなくん」
「へっ?!…佐瀬?」
声をかけてきたのは佐瀬だった。なんの邪気もなさそうな爽やかな笑顔で俺を見ている。
「おはよう、川名くん」
「お、おはよう…」
「へへ、やっと会えた。今日、部活終わったら一緒に帰ろう?」
「ほあっ?!」
「部活終わるの18時くらいになっちゃうんだけど、それまで教室で待っててもらってもいい?」
「いいです!何時でも待ちます!!」
勢いで挙手までしてしまった。何を思ったのか佐瀬はハイタッチしてきた。かわいい。
「やった!じゃあ部活終わったら超特急で走ってくるから」
「おお速そう」
「蜂谷にはないしょ、だよね?」
「あ…」
佐瀬はふふっと笑って口の前で人差し指を立てた。
「じゃあまたねー」
何今の。不意打ちで超かっこいい。蜂谷に秘密の理由、本当にわかってるのかは不明だけど…。
「ツバキー!ツバキツバキー!!」
急いで教室に向かい、さっきの会話を椿原に伝えた。
「すごくない?俺、絶対佐瀬と親しくなれてるよね?」
「はいはい。よかったよかった」
「なんだよーひとごとみたいに!」
「思いっきりひとごとなんだけど。…はい、これどうぞ」
「えっ、まさか…」
椿原に渡されたのは、透明な液体の入った瓶。
「新・椿香水」
「早くない?!ツバキどんな頻度でヒートが来てるの?そういや学校も昨日1日休んでただけだし…」
「俺、自分で抑制剤を改造してるんだ。ある程度なら周期や期間もコントロールできる」
「お前何者だよ…そのうち本当に自分の性別を変える薬だって作れるようになるんじゃない?」
「まあ…それが最終目標だよ」
「へええー」
どんな香りになったんだろうと思って蓋を外そうとしたら、慌てて止められた。
「今回のやつはめちゃくちゃ強力だから、人がいるところで開けるのもだめだ」
「え…そんなに?」
「肌に触れると催淫効果が出るようにもなってる」
「すご!ツバキすごい!ノーベルエログッズ賞!」
「うるせえ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 84