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変態と変態
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椿原とはギクシャクしたまま1日が過ぎてしまった。俺は仲直りしようとしてるのに、話しかけようとするとすぐに他の人と会話を始めてしまうのだ。なんか嫌な感じである。
できれば一緒に帰りたかったけど、佐瀬との約束があるからそれもできない。
まあいいや。一晩寝ればお互い忘れてるだろう。
佐瀬とは待ち合わせ場所とか打ち合わせていないから、とりあえず前回と同じく教室で待つことにした。
今日は運動場を使っている部活が少ないみたいで、佐瀬が走っているところを見つけることができた。さすが速い。走り高跳びが1番得意らしいけど、短距離でも全国優勝をしたことがあるらしい。
…まあ、そんなのはどうでもいいんだ。俺にとっての魅力は記録じゃなくて、佐瀬の綺麗なフォームだ。無駄がなくて、どこか優雅で、時が止まってるみたいに感じる。
そして最近、佐瀬を意識するようになって気づいたことがある。跳んだ後や走りきった後の佐瀬は、これ以上ないってくらい楽しそうに笑っているんだ。その笑顔を見ると、運動嫌いな俺まで楽しくなってくる。
自由に思いのままに体を動かせる佐瀬には、世界がどんな風に見えているんだろう。
「何か持ってる人はいいよな…」
悲しいひとりごとを言って窓に背を向けると、教室のドアの向こうに人影が見えた。
…このシチュエーション、昨日と同じでは?
こっそりドアに近づき、勢いよく開けてみた。
「おわっ?!」
「由比……何してるんだ?」
ドアの近くには由比がいた。よほどびっくりしたのか、壁にしがみついている。
「お、お前こそ、何してるんだ?」
「佐瀬を待ってる。で、由比はなんで今日も?もしかして毎日この教室来てるの?」
「い、いや、俺は…校舎の見回りだ!昨日も言っただろう!」
「嘘だね。だったらそんなに焦る必要ないじゃん」
「焦ってなんか…」
「本当のこと言わないんだったら、昨日のことツバキに話しちゃうよ?由比に襲われたーって」
「えっ?!いや、待て!」
…まあ、もう話しちゃってるんだけど!
そんなこと知るはずもない由比は、観念したようにため息をついた。
「この教室には、毎日来てる。見回りじゃない」
「うん。それで?どうして来てるの?」
「椿原の…椅子の匂いをかぎたくて…」
「………はい?」
由比は顔を真っ赤にして拳を握った。
「だから!椿原の椅子の匂いをかぎに来たんだ!」
「変態性が過ぎる!!」
「ふん!どうとでも言え!」
「さすがに引くわぁ。椅子の匂い?どうやってかいでるの?ちょっとやってみせてよ」
「調子に乗るな」
由比は俺を睨んだ。さっきみたいに脅したらやってくれるかもしれないけど、なんだかかわいそうだからやめておこう。
「そんなに好きなら話しかけてみればいいのに」
「…そういうのはいい」
「どうして?」
「俺はαで、特進クラスで、生徒会長なんだ。自分から話しかけるのは嫌だ」
「プライド高ぁ!そういうやつツバキは嫌いだと思うよ」
「椿原に気に入られるために生きてるわけじゃない」
「おお…たしかに?じゃあつまり、自分を曲げるくらいなら、一生ツバキの椅子の匂いをかいでるだけでいいと」
「……かぐのはもうやめる」
「じゃあ座る?」
「え?」
「佐瀬待つ間暇だし、ツバキの席に座って雑談でもしようよ」
「…ああ」
渋々といった感じで由比は席に着いた。
「由比はどうしてツバキを好きになったの?きっかけは?」
「お前には言いたくない」
「おー冷たい!そんな態度ならツバキに俺らのこと言っちゃうよ?」
「…きっかけ以外なら何でも答えてやるから」
「ふーむ」
そんなに隠されると逆に気になってくるな。
他人には話したくないような輝かしい思い出なのかなぁ。
「じゃあさ、佐瀬って普段教室でどうしてるの?」
「え、佐瀬?授業中は大体寝てるな」
「うわー似合う!可愛い!」
「あいつはもう諦められてるから、どれだけ寝てても怒られない」
佐瀬が同じクラスだったらよかったのにな。寝顔めちゃくちゃ見たい。無防備なほっぺをつつきたい。
ふわふわした妄想に浸っていると、由比が躊躇いがちに聞いてきた。
「えーと…お前と佐瀬はどういう関係なんだ?付き合ってるのか?」
「えー、いやいや!まさかまさか!」
「…ならよかった」
「ん?なんで?」
「あー…まあ…」
「???」
由比は唐突に立ち上がった。
「帰る。お前も早く帰れよ」
「もう匂いかぎにくるなよ」
「うるさい」
由比は急いで出ていってしまった。
運動時を見下ろすと、もう部活も終わる頃らしい。
…よし。今日は佐瀬を迎えに行ってみよう。
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