アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
知らない佐瀬
-
河川敷にある祭の会場は予想以上に人がいて、入って行く気がしなかったので、橋の上から見下ろしながら、少ししゃべることにした。
「変なこと聞いていい?」
「いいよ」
「佐瀬は俺のどこが好きなの?」
「んー?」
佐瀬はやけに楽しそうな様子で、俺の全身をわざとらしく眺めまわした。
「どこだろなー?どこだろなー?」
「…佐瀬」
「ここかな!」
佐瀬はそう言って俺のほっぺをむにっと突いた。
「え〜?なんかごまかしてる?」
「なんにも!俺はさ、川名くんが好きだから告白したんじゃないよ」
「えっ?」
「川名くんを恋人にしたいから、告白したんだよ」
「……うん?」
意味がわからない。同じことじゃないのか?
「景太」
「さ、佐瀬…?」
佐瀬は俺の首にそっと手を当てた。
「脈が速いね。緊張してるの?」
「名前で呼ばれたから、びっくりして…」
喉仏の隣で佐瀬の手の感触がして、緊張が加速している。つばすら上手く飲み込めない。
佐瀬は嬉しそうに笑って、手を離した。
「景太って呼んでいい?」
「いいけども…佐瀬は下の名前で呼ぶことに特別感を感じる方だったんだね」
「ん?どうして?」
「いやだって、ツバキのこと、りょーくんって呼んでたから…」
もごもごとそう言うと、佐瀬はくすっと笑った。
「だって覚えられないもん。りょーくんの名字、難しすぎ」
「あ、じゃあ、ツバキは?3文字なら覚えられるでしょ?」
「ツバキくん?」
「そう!」
やった!なんとなく心に引っかかっていたことが解決できそうだ!
思わずガッツポーズをすると、佐瀬に頭を撫でられた。
「景太は可愛いね」
「えっ?ど、どこが?」
可愛いなんて、今までほぼ言われたことがないから、なんだか動揺してしまう。
頭を撫でていた佐瀬の手がだんだん下がってきて、すーっと腕を伝って指と指を絡ませた。
「そろそろ行こっか」
「う、うん…」
さっきからドキドキしっぱなしだ。これまで想定していた、うぶで鈍感で天然な佐瀬と、今隣にいる佐瀬がどうにも結びつかない。
「どうしたの?」
「いや、なんか、手慣れてるなと思って…。今まで何人と付き合ったことあるの?」
「景太が初めてだよ」
「ええっ?嘘でしょ」
「本当だよ。俺、陸上以外に好きなものなんてなかったから」
そんな…陸上しかなかった場所に、俺ごときが仲間入りしたってこと?
信じられんな…。佐瀬は俺のことを何か素晴らしいものだと誤解してるんじゃないか?
疑問は胸に封じ込め、佐瀬の手を握り返した。
「これからよろしくな……翔也」
「うん!よろしくね!」
佐瀬は嬉しそうな笑顔を見せた。
これはもう誰がどう見ても文句なしのハッピーエンド。処女を散らした甲斐があったぜ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 84