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約束
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教室には俺と佐瀬の2人が残された。
「今週、大会なの?」
「んー?」
佐瀬はまともに答えず、体をぺたぺたと触ってくる。
「翔也!この前、続きはまた来週って言ってたよね?大会あるの、忘れてたの?」
「ああ!大丈夫だよ。デートはちゃんとするよ」
「大会は?」
「………」
佐瀬は無言で俺の頬をぷにぷにつまんで遊んでいる。
絶対気のせいじゃない。佐瀬の様子がどんどんおかしくなっている。
「大会のことなんて、景太が気にする必要ないよ。ちゃんとやるって」
「じゃあどうして部活に行かないんだ?今週大会なら、練習しなくちゃいけないのに」
「景太に会いたくなったから」
「うっ……」
即答されてたじろいだ。本気で言ってるんだろうか?俺に会いたくなったから、ふらーっと部活抜けてこっちに来たと?
「景太は来てほしくなかったの?」
「そういうわけじゃないよ。でも部活はちゃんと出てほしい。俺は楽しそうに走ったり跳んだりしてる翔也が好きだから」
「…さっき、ツバキくんと何の話してたの?」
「え、何って…」
惚気話だよ、と言おうとしたら、佐瀬に手首を強く掴まれた。
「ツバキくんともっと話したいから、俺が来たのが邪魔だったんでしょ」
「ええ?」
「景太は俺よりもツバキくんのほうが大事なんだもん…」
うん?ももももしやこれは…
「翔也…ヤキモチやいてるの?」
「ヤキモチ?」
佐瀬はきょとんと首を傾げた。
「ふふふふふ」
「景太?急に笑い出して…変なきのこでも食べた?」
「大丈夫だよ。俺は翔也のことが世界で一番大事だから」
思わず佐瀬を抱きしめた。まさか椿原に嫉妬するなんて。可愛い。めちゃくちゃ可愛い。
「ツバキはただの友達だよ。もしかして、それが不安になって教室まで来たの?」
「えっと……」
佐瀬は何か言おうとしたが、結局黙って俺の胸に顔を押し付けた。
「よしよし。何も心配することないから、部活行ってきなよ」
「………」
体を離そうとすると、佐瀬はなぜか少し泣きそうな顔で俺を見上げた。
「翔也?どうしたの?」
「…帰る」
「えっ、翔也?」
佐瀬は足早に去っていった。帰る準備が全くできていない俺は、ついていくことができなかった。
一体どうしたんだろう?さっぱりわけがわからないのだけど、もしかして俺、ラブコメの主人公チックな鈍感人間なんだろうか?
いや、そんなわけない。佐瀬が悪いんだ。佐瀬は単純そうに見せかけて、常人とは違う思考回路で生きている。もっと佐瀬のことをわかってあげないとな。
俺は決意を胸に抱き、とっとこ帰宅することにした。
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