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おひる
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お昼休みになり、佐瀬に会うために中庭へ向かった。佐瀬は既にベンチに座っていて、俺の姿を見るとブンブン手を振ってきた。
「景太ー!待ってたよー!」
「早いね」
「俺足速いもん」
「さすが元陸上部」
「ふふっ、俺、元陸上部!」
佐瀬はなぜか嬉しそうに胸を張った。
購買で買ってきたサンドイッチを膝の上に乗せると、佐瀬はうらやましそうにじっと見つめた。
「サンドイッチ食べたいの?」
「んー、人のものっておいしそうに見えるよね…」
「じゃあ、交換する?翔也の昼ごはんは何?」
「ない」
「…うん?」
佐瀬はサンドイッチから目を逸らさない。
よく見ると弁当を持っている形跡はなく、全くの手ぶらだ。
「教室を出た時点で、カバンの中に弁当置いてきちゃったことに気づいたんだ」
「取りに行かなかったの?」
「取りに戻ったら景太に会えるの遅くなっちゃうじゃん!」
「じゃあ今から行きなよ」
「景太との時間が減っちゃうじゃん!」
「アホじゃん!」
「ねえ、景太のサンドイッチ1個ちょうだい」
「2個しかないんだけど?!」
アホな理由で俺の昼ごはんが奪われようとしている。
調子に乗った顔が可愛いからすぐあげた。
「ふはは!美味しいね!」
「もー…明日は翔也が俺のご飯用意してよ」
「え!明日も一緒にご飯食べれるの?」
佐瀬の表情がぱっと輝いた。俺なんかの一言でこんなに喜ぶなんて…面白い。
「お昼は毎日ここで会おうよ」
「えー!わーい嬉しい!景太大好き!」
「そのかわり、朝は別々な?俺の家まで来るの大変でしょ」
「大変じゃないよ。俺の目的地は学校じゃなくて景太だから。景太が学校行くからついていってるだけ」
「えー…?」
「景太が学校サボって遊びに行くなら、俺も遊びに行く」
「じゃあもし俺が陸上部に入ったら、翔也も陸上部に戻る?」
「う………」
佐瀬は珍しく言葉に詰まったが、すぐに口元を緩めた。
「ふふ、意地悪な質問。景太、陸上部なんて入る気ないくせに」
「もし、入ったら?」
俺が陸上部に入ることで佐瀬が元に戻るなら、入ってもいい。むしろすごくいい考えなんじゃないか?と思ったけど、その佐瀬のが一枚上手だった。
「陸上部に入ったのに、俺が戻らなかったら、景太は部活続ける?」
「え…やめる」
「じゃあ戻らない」
「そうかぁ…」
なんだか悔しくてため息をつくと、佐瀬は笑いながら俺のほっぺたをつまんだ。
「どうして景太はそんなに俺に陸上をやってほしいの?」
「うーん……翔也だったらどう思うの?例えば俺がすごく好きなものがあったとして、翔也と付き合ったのをきっかけにすっぱりやめちゃったら」
「嬉しい」
「えっ?」
「俺の存在で景太の人生が変わったってことでしょ?そんなのめちゃくちゃ嬉しいじゃん」
そういう捉え方もあるのか…。
「高校卒業したら、景太と2人暮らししたいな」
佐瀬はサンドイッチをもしゃもしゃ食べながら語りだした。
「気が早いなー。翔也、高校卒業したらどうするの?」
「んーと………」
突然佐瀬が動きを止め、宙を見つめている。
「どうした?」
「いや…部活の推薦で進学するつもりだったから、どうしようかなーと思って」
「じゃあ勉強しないとね」
「勉強、苦手だなぁ…。景太のお嫁さん目指そうかな」
「いやいやいや!俺じゃ養えんって!」
「じゃあ景太に経済力がつくまで高校に通い続けよう」
「冗談だよね?ねえ?!」
「ふふふ」
「翔也ぁ…」
やっぱり陸上続けた方が…と思ったけど、きっとどれだけ言っても堂々巡りだ。
「景太、明日のお昼は何食べたい?」
「んー、おにぎりかな」
「各種取り揃えておくね!」
佐瀬はにっこり笑って親指を立てた。
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