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帰り道
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「なぁ…本当に俺の家来るの?」
帰り際、椿原は不安そうに聞いてきた。
「行ったらだめ?」
「俺はいいけど…朝も言ったじゃん。佐瀬はきっと嫌がる」
「そんなこと言ったら、ツバキとはもう遊べなくなっちゃうよ。ただの友達なんだし、大丈夫」
「友達…だけど…」
「じゃ、後でな」
椿原に手を振り、佐瀬を迎えに行こうかと教室を出たら、扉のすぐ横で佐瀬が待っていた。
「うわ!翔也早い!」
「えへへ、超特急で走ってきた」
髪をぼさぼさにしてにこにこ笑っている佐瀬が可愛くて、にやけながら髪の毛を撫でつけた。
「髪の毛ふわふわしちゃってるよ。可愛い」
「えー!かっこよく整えて」
佐瀬は少しかがんで同じ目線になり、顔をぐいっと近づけてきた。
「わっ…イケメンが近づいてきた」
「俺?俺のこと?」
「うん。翔也は意外とかっこいい」
「意外とって何?」
「んー…意外とね」
「だから何さー!」
足が速くて顔がかっこいいって、小学生の時めちゃくちゃモテたんじゃないだろうか?…いや、もしかして今もモテてる…?
「ねえ、翔也ってモテるの?」
「うん?気になるの?」
「え、そりゃまあ…」
なんか恥ずかしい質問しちゃったな。
佐瀬、めちゃくちゃうれしそうな顔しとる。
「俺、モテるよ」
「え?!」
「モテるよ」
「…例えば?どんな子?」
「えっ、うーんと……モテるよ」
「おっ…急にどうでもよくなってきた」
「も、モテるから!」
「はいはい」
その後も特に中身のない話をしながら学校を出た。運動場の横を通る時に蜂谷に止められるかもしれない、と思ったけど、蜂谷の姿は見当たらない。
「蜂谷、いないね」
「蜂谷は今俺の教室にいると思うよ」
「…なんで?」
「授業終わったら迎えに来るって言ってたから、来る前に帰った。クラスメイトには、蜂谷が来たら、そこで待っててって伝えてもらうことにしてる」
佐瀬は爽やかな笑顔で鬼畜発言を繰り出した。
「蜂谷は今も翔也を待ち続けているのか…」
「だって、しつこいんだもん」
かわいそうな蜂谷!
「翔也と蜂谷って、どういうきっかけで仲良くなったの?」
ふと気になって聞いてみると、佐瀬は肩をすくめた。
「さあー?蜂谷、中学の頃、なんか急に陸上部やめちゃったんだよなぁ。そこからかな」
「蜂谷と翔也って同じ中学なんだっけ?」
「うん。蜂谷、すっごく足速かったんだよ!マネージャーじゃなくて、陸上続ければいいのにね」
そいつは盛大なブーメランだぞ、と思ったが言わないでおいた。
佐瀬は全く覚えてなさそうだけど、きっと中学時代に何かあったんだろうな。
報われない蜂谷に想いを馳せていたら、佐瀬に自然と手を繋がれた。
「ねえ、今日どっか行こうよ。部活やめたから時間あるし」
佐瀬は瞳をキラキラさせている。毎日部活を頑張っていたから、解放感ではしゃいでいるんだろうか。
「じゃあミスド行こうよ。駅前の」
「よっしゃードーナッツだ」
佐瀬はガッツポーズをした。
たしか今月は抹茶のドーナッツが新しく出てたはずだ。椿原が抹茶好きだからおみやげに買っていこう。
もちもちのドーナッツを2人で食べて、それぞれ電車に乗って帰った。また家まで送っていきたがるかと思ったけど、案外あっさり解散となった。
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