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一応佐瀬に電話をかけてみたが、繋がらない。昨日の俺の話のせいで怒っているってことだろうか?けんかは嫌だな…。
学校に着いたが、昨日に引き続き椿原は来ていなかった。まだ体調が良くないのかもしれない。連絡したいけど、さすがになぁ。
落ち着かない気持ちでスマホを眺めていると、ちょうど椿原からラインが来た。
ストーカーウェアのことを思って一瞬迷ったが、まあ間違えて開けちゃったことにしようと言い聞かせ、トーク画面を開いた。
『たすけて』
そこにはその4文字が表示されていた。
「え?なにこれ…?」
首を捻っていると、追加で1枚の画像が送られてきた。
その画像は、スマホの地図アプリで現在地を表示したもののスクリーンショットだったのだが…。
「一体どこなのか見当もつかないな」
拡大しすぎているせいか、地名のヒントがないし、全く今まで見た覚えのない場所だった。
でもなんか…めちゃくちゃ嫌な予感がする…。
俺は教室を飛び出した。
向かった先は蜂谷のクラスだ。蜂谷は窓際で外をぼーっと眺めている。ずかずかと教室へ入り、蜂谷の肩に手を置いた。
「蜂谷!おはよう」
「よく平然と話しかけてくるな…」
蜂谷はいつにもまして嫌そうな顔で手を払った。そういや俺のせいで佐瀬に縁を切られた状態だもんな。
「平然としてても申し訳なさそうにしてても俺らが不仲なのは変わらないし。そんなことよりこの地図、どこか知らない?」
「そんなことよりぃ?」
蜂谷は怒りっぱなしだが、スマホを見せると一応ちらっと目を落とした。
「ああ、これ、翔也の家」
「え?こんなところにあったっけ?」
佐瀬の家には付き合うことになったときにお邪魔している。地図を見たわけじゃないけど、周りの建物が全然違う気がする。
「正確に言うと、前まで翔也が住んでた家」
「ふーん…いつ引っ越したの?」
「……何も聞いてないの?」
「え?」
「………」
蜂谷はぷいっと横を向いた。
「とにかく、そういうことだから」
「いや、待って。ここへの行き方を教えて。この地図だけだとよくわからないし」
「え、今から行くの?なんで?授業は?」
「えーっと…ツバキからラインが来たんだ。助けてっていうメッセージと、この画像が」
「はあ?椿原から…?」
蜂谷は怪訝そうな顔で地図を見つめている。
「僕じゃなくて翔也に聞けば?」
「翔也は連絡がつかない」
「お前、頼りにならないな。翔也の彼氏だって主張するなら、ちゃんと翔也のこと大事にしろよ」
「うるさいな」
「僕に当たるなよ。今回は僕何にもしてないからね」
「わかってるってば!」
ついイライラして、大きな声を出してしまった。
「そんなのいいから、元翔也の家への行き方を教えてくれよ。ツバキが助けを求めてるんだ」
「はあ…スマホ貸せ」
蜂谷はめんどくさそうに俺のスマホを操作し、地図アプリで行き方を表示してくれた。
用は済んだとばかりにさっさと追い払おうとする蜂谷の腕を、とっさにつかんだ。
「何?」
「この前はごめん。俺のせいでわざとひどいことを言っただけで、翔也は蜂谷のことを嫌いじゃないって言ってたよ」
「好き嫌い以前に、関心がないんでしょ」
「え…?」
蜂谷はいつになく冷めた目で俺を見ている。
「僕だってさすがにわかってるよ。昔から翔也は、依存体質なところがあるから」
「昔から…?最近変になったわけじゃなくて?」
「翔也は陸上をするために邪魔なものは全部排除するようなやつだったよ。たしかに第一印象は明るくて能天気って感じだけど」
「排除…」
「そんな翔也に…憧れてたんだけどな…」
蜂谷はぼそっと呟き、自分の席に座った。
「ありがとう蜂谷」
「きっと上手くいかないよ」
「え?何?」
「お前じゃ翔也の彼氏は務まらない」
「…ありがとうは撤回する」
なんだって蜂谷はこんなに偉そうなんだ。絶交されたくせに!
わざとドスドス音を立てながら教室を出た。
さて、佐瀬の家か…。
もう一度佐瀬に電話をかけてみたけど、やはり繋がらない。
そうこうしている間に椿原の身に何か危険なことが起きているのかもしれないと思うと、あまりぐずぐずしていられない。
1限目の授業が始まる前に、俺は急いで学校を抜け出した。
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