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前向き佐瀬
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それから夏休みまでの数週間、椿原は学校に来なかった。ヒートがひどくて休暇をとっている、というのが表向きの理由になってるけど、明らかな嘘だ。ラインの返信もなかなか来ない。椿香水の作成に邁進しているんだろうか。…心配だ。
そして佐瀬は、新たな動きを見せていた。
「かーわなくん!」
「ん?!久しぶり。えっと…なんか楽しそうだね」
終業式の後、しばらく会っていなかった佐瀬が教室に現れた。別れた直後とは全く違う、陽気な感じだ。
「だって夏休みが始まるんだよ。陸上部やめたから時間はたっぷりある。俺は夏を全力で楽しむんだ!」
「おお…頑張れよ」
「とりあえず、一緒に海行こう!海!」
「あのー、非常に聞きづらいんだけど……俺たちもう別れたよね?」
「うん。友達になった。俺は友達と海に行きたい」
「…じゃあ、蜂谷とかも誘うの?」
「ううん。2人で行きたい。景太に日焼け止めクリーム塗ってあげたい」
「めっちゃぐいぐい来るじゃねえか!!」
思わず大声で突っ込んでしまった。
佐瀬は何食わぬ様子でにこにこ笑っている。
「だって、俺は景太ともう1回付き合いたいから。色々と勉強してきたんだ」
「勉強って?」
「押してダメなら引いてみろ!」
「引いてないじゃん」
「今は押してる期間だから」
「一生引かなそう…」
「それに友達なんだから、友達っぽいことしてもいいでしょ?」
「友達は日焼け止めクリーム塗りたがったりしないんだよ」
「んん?!でも…塗りたい。景太の白い肌を全身くまなく触りたい」
「お…おお……」
大会をサボって初めて佐瀬とセックスした日の光景がふと頭をよぎって、なんとなく俯いた。
「あ、想像した?景太かわいいね」
頬をぷにぷにとつつかれた。距離感が全く友達じゃない。
「もう……一旦離れた方がいいと思って、別れようって言ったのに」
「……嫌なら断ってもいいんだよ。夏休み、すっごく暇だから遊んでほしかっただけだし。俺は景太が好きだから、迷惑だったら諦める」
「い、嫌なわけでは…」
急にしゅんとした佐瀬に戸惑い、焦ってそう言うと、佐瀬はぱーっと笑顔になった。
「やったー!押してダメなら引いてみろ、威力絶大だね!」
「ええぇ…」
「海じゃなくて、川でも湖でも屋外プールでもいいよ。また連絡するね?」
「わかったわかった」
押しに負けて頷くと、佐瀬は嬉しそうに手を叩いた。
「ありがとう!お礼に景太のお願い、なんでも聞いてあげるよ。何がいい?」
「お願いかー」
体液をください!
…とはさすがに頼めないよなぁ。
「じゃあ俺の行きたいところにも一緒に遊びに行こう」
「え…?いいの?俺と会う日、増えちゃうよ?」
「うん。会いたいし」
「うわぁ…うわぁ…」
佐瀬は口をぽかんと開けてうろうろしている。
会いたいというのが嘘なわけではないけれど、佐瀬の喜ぶ反応が見たくて調子に乗って言ってしまった。
「…俺が我慢できてたら、こんな楽しい時間がずっと続いてたのかな」
しばらくすると少し寂しそうな表情になって、佐瀬がそう呟いた。
「……ごめん」
「なんで景太が謝るの?」
「俺の方こそ何にも我慢できなかったから」
「うん………」
佐瀬は何か言いたげに俺を見つめている。
「どうしたの?」
「…あのさ、夏休み、本当に遊んでくれるなら、その時ツバキくんのことを教えてほしい」
「何が聞きたいの?」
「付き合ってた時のこととか」
「え…何で?」
「景太のこともっと理解して、全部肯定できるようなおおらかな心を養いたい」
佐瀬は真面目な顔でそう言った。
何日か会わない間にずいぶん変わった気がする。やっぱりあのまま付き合っているよりは、別れてよかったってことだろうか…?
「じゃあ俺も聞きたいことがある」
「何?」
「翔也の家族のこと」
「……うちの親、会わなかったっけ?初めて家に来て、恋人になった日」
「えっと………うん」
そういえば、あの時佐瀬は親がどうこうって言っていた気がする。
でも蜂谷は、佐瀬が親戚に引き取られたと話していた。
佐瀬が話したくないなら、これ以上聞くのはよくないよな…。
「…じゃ!夏休みは日焼け止め、塗りに行こう
ね!」
「目的おかしいぞ」
このまま一緒に帰るのかと思いきや、佐瀬はどこかへぴゅーっと行ってしまった。
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