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「川名は思慮が浅すぎるんだよ。あいつを連れてきて、番を解消して、はいこれで仲直りなんて、都合良く進むと思ったわけ?」
椿原は玄関で懇々と説教をする。
「はい…思ってました」
勢いに押されて俺は力なく頷いた。
「あいつは川名にとって良い友人なのかもしれないけど、俺にとっては最悪のレイプ犯なんだよ。わかってる?」
「わかっ……でも、根は悪いヤツじゃないんだ。結婚しようって言ったのだって、由比なりに色々考えてのことみたいだし…」
「川名は俺より由比の味方をするんだな」
「そういうわけじゃ」
ドン
という音が扉から聞こえた。由比が叩いているようだ。
「椿原…開けてくれ」
「……っ」
椿原は突然よろめき尻もちをついた。
「ツバキ?大丈夫か?」
「あっ…ああ…」
「おい椿原、感じてるんだろ?俺とお前は、ひとつになるべきだって」
「由比…?何言ってるの…?」
どうも2人の様子がおかしい。さっきまで元気だったはずの椿原が、今は床に手をついて具合が悪そうに肩で息をしている。由比もなんだか切羽詰まった様子で気持ち悪いことを言っている。
「川名ぁ…絶対、ドアを開けるなよ」
椿原は俺の腕をつかみ、辛そうな表情でそう訴えた。
「わかった。えっと…体調悪いのか?部屋まで連れて行こうか?」
「い、いや…」
椿原の視線が玄関のドアに釘付けになっている。
「番になってから今日まで、なるべく会わないようにしてた。こうなるってわかってたからな。だが、お前も限界だろ?」
由比の声が再び外から聞こえた。椿原の体がびくっと震える。
「一緒になろう。俺は椿原が必要だし、椿原には俺が必要だ」
「必要…ないっ」
椿原は床を拳でドンと叩いた。
「お前は俺にしか発情できないんだ。今まで辛かったよな。気持ちよくなりたいよな」
「お…おれは……」
「ツバキ、大丈夫」
見ていられなくて、俺は椿原を抱きしめた。
椿原の体は熱くて呼吸が荒くなっていて、そんな自分を許せないみたいに、手を握りしめていた。
「離して、川名」
「どうして?」
「俺は、お前に嫌われたくない…。こんな…気持ち悪い姿、見られたら…」
「ツバキは気持ち悪くなんかない」
「あいつの言う通りなんだ。俺はあいつにだけ発情する。大っ嫌いなのに、時折あいつが欲しくてたまらなくなる。川名にだけは、こんなとこ見られたくなかった。俺……」
椿原の視線の先には、膨らんでいる股間があった。すっと目を逸らし、再び抱きしめると、椿原は今度は抵抗しなかった。
由比はより一層強くドアを叩いている。
「川名、開けてくれ。お前は俺のこと応援してくれてたよな?だったら邪魔するな」
「由比…正気に戻ってくれよ…」
どうしよう。こんなことになるなんて思ってなかった。全部俺のせいだ。椿原も由比もお互い避けていたのに。
「助けて、川名」
椿原は潤んだ目で俺を見上げた。
どうしたらいいのかさっぱりわからなくて、俺は混乱の中椿原にキスをしてしまった。
「うっ…うええ…」
その瞬間、椿原は横を向いて嘔吐した。
「ツバキ?!大丈夫か?!」
「あいつ以外とそういうことは、できない」
「それも、番だから…?」
「……ごめん」
「ツバキは悪くな…うっぷ…」
最悪だ。もらいゲロしそう。とりあえず、この場を離れなくちゃ。
「ツバキ!とりあえず風呂場に連れてくから、ゲロ洗って、落ち着くまで隠れてて」
「川名は…?」
「俺は由比をなんとかする。距離が離れれば、ちょっとはマシになるかもしれないし」
「ひとりにしないで」
椿原はすがるように俺の手を握った。
「わ……かった。ちょっと待って」
ポケットを探り、スマホを取り出す。ここまで助けに来てくれそうな人は、1人しか思いつかなかった。
『はい…』
「もしもし、翔也?!」
幸いにも佐瀬はワンコールで出てくれた。
『景太どうした?電話なんて。あ、今から海行く?』
「助けてくれ。由比が、えっと…ちょっと状況が複雑で上手く言えないんだけど…」
『俺、何すればいい?』
「玄関の外に由比がいるんだ。追い払ってほしい」
『30分くらいかかっちゃうけど、大丈夫?通報とかしたほうがいい?』
「それは……しなくていい」
『すぐ行くね』
佐瀬は早口でそう言って電話を切った。
「川名、今の電話…」
「ごめん。翔也を呼んだ」
「居場所伝えてなかったよね?」
「ああ…位置情報オンにしてるから、翔也には伝わってると思う。ほら、ストーカーウェアがあるから」
「え……?」
「そんなことより風呂に行こう。由比からちょっとでも離れられるし、ゲロも洗ったほうがいい」
椿原を肩で支えて風呂場へ向かう。その間も後ろから由比の呼びかける声は聞こえ続けていた。
「ストーカーウェア……」
「え?」
椿原は息を切らしながら囁いた。
「…なんで、消さないの?」
「まあ……いいじゃん。役に立ったし」
「………」
そもそも最初から、ストーカーウェアにあまり抵抗はなかった。椿原や蜂谷に迷惑をかけない範囲なら、嫉妬されるのも縛られるのも嬉しかった。
「風呂の外で待ってるから、何かあったら呼んで」
「…うん」
「オナニーしたかったら、してていいよ」
「黙れ」
椿原を風呂に入れて、ドアの前に座り込んだ。
大変なことになってしまった。事情を全く説明せずに佐瀬を呼び出したけど、大丈夫だろうか。以前椿原について由比と会話しているところを聞かれたから、少しは察しているかもしれないけど…佐瀬だからな…。
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