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文化祭準備中!
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文化祭の準備は授業が終わった後を中心に着々と進められている。
「商品、何にしようね?その辺で花でも摘んでくる?」
「…………」
「ツバキ?」
「ん?ああ…」
2人で机を合わせて考えていたのに、椿原は話を聞いてなかったようだ。
あの日以来、椿原はよくぼーっとしている。タイムリミットの文化祭は、いつもと同じ速度で近づいている。
「雑草に値段つけて売るのはよくないと思う」
「あ、聞いてたの?」
「うん。…じゃあ、川名の生写真を売るのは?」
「売れ残ったら俺泣いちゃうよ?ツバキのが需要あるでしょ。そんな綺麗な顔してるんだし」
「キモいから嫌だ」
「そんじゃあ人にやらせるんじゃないよ。…….あー!すごくいいこと思いついた」
「何?」
「SOLD OUTって紙作ってずっと置いとくの」
「クラス委員にバレたら殺されるよ」
「だよな〜。やっぱり普通に、家にあるいらない本とか服とか持ってくるのがいいんじゃない?フリマみたいなもんだし」
「まあそうか」
「出せそうなもの探してくるよ」
「うん……」
また椿原はうわの空で、虚空を見つめている。
「ツバキー?」
「……椿香水を、すごーく薄めて売るのはどうかな」
「椿香水はもうやめるって約束したじゃん」
「αをΩにする機能はないし、誘惑できる効果が少しある香水ってことで売ればいい」
「だとしても…ツバキを切り売りしてるみたいで嫌だ」
「どういうこと?」
「それってつまり、ツバキのフェロモンが不特定多数の人の手に渡って、知らないところで香ってるんでしょ?それはなんか…嫌だ。山内みたいなやつがまたツバキを狙うかもしれないし」
「……ちょっと試しに作ってみる」
「え?俺の話聞いてた?」
できれば危ないことはしてほしくない。何かあったときに、絶対にそばにいられるわけじゃないのに。
「まあいいや…作っても売らないからね。じゃあひとまず解散する?」
「川名、この後一緒に帰ろう」
他の人の作業を手伝おうと思って教室を見回していたら、椿原に腕をつかまれた。
「いいけど、なんで?」
「始業式の日、色々あったじゃん。それで」
「うん…?」
あれから2週間経ったけど、全く記憶は薄れていない。4階から飛び降りて椿原を助けに行って、告白を保留にされて…。
「じゃ、俺は看板作り手伝ってくる。後でね、川名」
「え?それでって何なの…?」
「何のこと?」
それ以上話す気はないらしく、椿原はさっさとその場を離れた。
佐瀬は告白の返事はせず、椿原に時間をあげると言っていた。
つまり今からもしかして俺は……告白されるのか?!
モテ期だ。完璧なるモテ期だ。美形に挟まれて嬉しい。
「何をにやにやしてるんだ」
突然背後から話しかけられ、驚いて振り返ると複雑な友達が立っていた。
「んっ?!なんだ由比か。なんでこの教室に?」
「生徒会長の仕事で見回りだ。危ないことをしていないかチェックしている」
「ふーん…」
由比はなにげないふりで教室を見回しているが、俺にはお見通しである。
「ツバキなら看板作りの手伝いで出てったよ」
「あ…ああ、そうか」
由比の肩からふっと力が抜けた。やっぱり、由比は椿原に会いに来たんだ。
「あのさぁ、番を解消したからって、何事もなかったみたいに仲良くなれるわけじゃないからね?」
「はあ?何の話だ…」
「ちゃんと言わなきゃわかんないの?ツバキに無闇に近づくなってことだよ」
「…それは、お前の恋人だからか?」
由比は少しむっとした様子で聞いた。
「そういうことじゃなくて、ヒートが来たりしたら大変だろ?由比は反省してないの?」
「じゃあ、お前は椿原を全てのαから遠ざける気か?俺はもう大丈夫だ。α用の抑制剤も使ってる。仲良くしたいから近づくのはだめなのか?」
「だって…由比は…」
「椿原も嫌なら自分で断るはずだ。お前らが付き合ってるわけじゃないなら、俺はちゃんと椿原本人にフラれてから諦める」
「由比は、ツバキのトラウマじゃん。軽率に近づくべきじゃないよ」
「そうか。……お前らのクラスは、何をやるんだっけ」
由比は露骨に話題を変えてきた。露骨というか、めちゃくちゃ下手だ。
「フリマだよ。何人かに分かれて店を出店するんだ。由比は何を売ってたら買う?」
「買わん」
「えー……」
「帰る」
「わ、待てよ!ちゃんと聞け!ツバキに無神経に近づくなよ!」
由比は振り返らずに早歩きで去っていった。やっぱり、見回りなんかじゃない。椿原を探しにきただけだ。
「揉めてたね」
またしても誰かに背後から話しかけられた。といっても声でわかる。これは佐瀬だ。
「…やあ、翔也」
あの一件以来しばらく会っていなかったけど、佐瀬はいつもと変わらない様子でにこっと笑った。
「こんにちは、俺の将来のお嫁さん♪」
「何言ってんだか」
「えへへ。なんか楽しくてテンション上がっちゃうよ。文化祭の準備ちゃんと手伝うの初めてだもん。まあ今はサボってるんだけど」
「去年は部活?」
「うん。当日だけ参加した。コスプレ?みたいなやつ」
「え!なに着たの?写真ある?!」
「んー…ないしょ」
「な…なにそれ!教えてよ!」
「ふふ、どうしよっかな」
佐瀬は楽しそうに笑って耳元に口を近づけた。
急に吐息が当たって体がびくっと動いてしまった。
「翔也…?」
「うちに来たら見せてあげる。エッチな衣装着たところ」
「エッ……エッ……?!一体文化祭で何を」
「あはは!冗談だよー!執事?みたいなやつのコスプレしたんだよ」
「十分エッチじゃん…」
「え、そうなの…?今日暇?うち来たら写真見せてあげるよ」
「おお!うん。行く行……いや、今日は用事あるんだった」
ほいほいついていこうとしたところで、椿原との約束を思い出した。さすがに、「じゃあ今日は3人で一緒に佐瀬の家に遊びに行こう!」とはならないもんな…。
「……ツバキくん?」
佐瀬はにこにこした表情のまま聞いてきた。内心何を思っているのかは…謎だ。全くわからない。
「あ、うん。一緒に帰る約束したから」
ありのままを答えると、佐瀬は軽く頷いて手を振った。
「わかった!じゃあそろそろ教室戻ろうかなー。サボってるのバレたら怒られちゃう」
「そういえば、翔也のクラスは何やるの?」
「劇だよ。特進クラスって毎年文化祭はそんなに頑張らないんだけど、今年はやる気満々の人がいてさぁ」
「へー!翔也も出演するの?」
「うん!白雪姫の王子様役」
「ええっ!すごいじゃん!」
「アホだからなるべく台詞少ない役にされた…」
「翔也は正統派イケメンだから、絶対王子様似合うよ」
「えへへ?本当〜?」
「当日見に行くから、頑張ってね」
「わーい!じゃあ俺その場で告白の返事するから!」
「…え?」
「んじゃあね〜」
佐瀬はぴゅーっと走って姿を消した。
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