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復活
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文化祭は無事終了し、元の生活に戻った。ただし前と違うのは、佐瀬との関わりが全くなくなってしまったことだ。中学で椿原にフラれた時は、なんだかんだ友達に戻ることができた。でも佐瀬はそもそも友達だったわけじゃないから、戻る場所なんてないのだろう。
そして椿原は…
「学校終わったらツバキの家行っていい?」
「んー…なんで?」
昼休み、教室で一緒にご飯を食べながら誘ってみたが、椿原は俺の話より弁当に集中していた。
「え、単に遊びたいから…」
「用事あるから無理」
「本当かよ…?」
「本当」
悲しいほどの塩対応だ。文化祭以降何度も誘っているのに、椿原は毎回用事があると言って断わる。
「君は毎日ハードスケジュールだね」
「来年は受験だよ。川名こそ勉強大丈夫なの?」
「えー…気が早くない?」
「俺は目標が高いから」
「じゃあ一緒に勉強しよう。それならおうち行っていい?」
「また今度ね」
「はー…」
俺のこと好きって言ったのに、なんでそんなに冷たいの?
…とは聞けない。なんかみじめだから。
授業が全部終わり、椿原と帰ろうと席を見たら、風のように素早く教室を出てしまった。仕方なく1人でとぼとぼ帰宅していると、運動場を通り過ぎようとしたところで後ろから肩を叩かれた。
「やあやあ川名くん」
「うん…?」
振り向くと、蜂谷がにこにこしながら俺を見ていた。笑顔を向けられるなんて、初めてかもしれない。
「やあ蜂谷くん…」
「聞いたよ。翔也と別れたって。あ、違うかな?もともと別れてたわけだから…フラれた?フラれたってこと?」
「嬉しそうだね」
俺の記憶だと、蜂谷は別れることに反対してた気がするんだけど…気のせいだっけ?
すると蜂谷は運動場の方を指差した。
「翔也が戻ってきたから」
「えっ!」
慌てて蜂谷の指差す方向を見ると、ちょうど佐瀬があの綺麗なジャンプを決めているところだった。
「戻ったんだ…よかった」
「本当に!今年は無理だったけど、来年のインターハイは絶対出場できるよ。翔也が陸上部に戻ってきて、しかもお前と別れてるなんて、僕が一番望んでた展開だもん!ありがとう川名!大好き!」
「えー…なんかむかつく」
「お前はお前で椿原と付き合ってるんでしょ?じゃあいいじゃん」
「付き合っ…うーん…」
「え、違った?」
「いや実は」
「あ、僕もう戻んないと。川名のくそくそどうでもいい話聞いてる場合じゃないんだよね」
「はあー?」
蜂谷は陸上部の方へ走っていってしまった。全く自分勝手なヤツだ…。
佐瀬は楽しそうに、でも真剣に跳び続けている。蜂谷の言う通り、これが一番いい結末だったのかもしれない。俺と付き合っていたら、佐瀬は一生あの場所へは戻れなかったのかもしれないし…。
視線を感じたのか、佐瀬がふとこちらを見た。控えめに手を振ると、佐瀬はぴょんぴょんジャンプしながら大きく手を振り返してくれた。
…でもそれだけだ。佐瀬はこっちに来ないし、俺もすぐに立ち去った。
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