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認識
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翌朝、学校に行こうと家を出ると、玄関の前で椿原が待っていた。
「おはようツバキ。体調大丈夫?」
「昨日はごめん。心配してくれたのに、冷たく当たって」
椿原はそう言って頭を下げた。
「いいよいいよ、そんな。謝らなくても。俺のほうこそ、強引だったよね」
「うん。強引だった」
「ん?!」
あっさり肯定されて言葉に詰まっていると、椿原は笑みを漏らした。
「ふふ、別にいいよ。でも、付き合ってもないのにああいうことするのはどうかと思うよ」
「……え?」
付き合って……ない。
果たしてどういう認識だろうと迷っていたけど、どうやら俺たちは付き合ってなかったらしい。
「どうかした?」
「今わざと釘刺してきたよね?」
「何の話?」
椿原がわからない。なぜに「付き合っていない」という方向で確定させたいのか。
…そういえば、好きとは言われたことがあるけど、椿原は一貫して俺と付き合いたいわけじゃないと主張している。佐瀬と完全に別れた今でも、その気持ちは変わらないということ?
「今日は一緒に帰ろうよ。昨日川名に会ってから、症状も落ち着いてきたし、抑制剤も多めに持ってきた」
たしかに椿原は昨日より元気そうだ。何もできなかったけど、俺が何かの助けになったならよかった。
「やめとく。早く帰って安静にしてなよ」
「え…?」
椿原は不安そうな表情で俺を見た。
「ちょっと学校で用事あるから。ごめんね」
「体調は本当に大丈夫だよ?用事あるなら待つし…」
「ううん、また今度ね」
「あ、そう…」
いいことを思いついた。俺はまだまだオメガバースのことをわかっていない。椿原のそばにいるためには、もっとΩのことを知らないといけないんだろう。
「…というわけで、俺に知識を授けてほしい」
「帰っていい?」
授業が終わった後、俺は図書室で自習をして時間を潰し、部活動終了後の運動場へ来ていた。蜂谷に話を聞くために。
「なんか好きな食べ物奢るからさぁ。やっぱり蜂蜜?蜂谷くんは蜂蜜食べたい?」
蜂谷はつまらないことを言った俺を蔑むように睨みつけた。
「なんで僕?僕たちお友達でしたっけ?」
「今までは仲悪かったけど、それは翔也のことがあったからでしょ?蜂谷この前あんなに上機嫌だったじゃん。水に流して仲良くなろうぜ」
「都合良すぎだろお前……わっ翔也ぁ!どうしたの〜?」
俺と蜂谷の間に割り込むように、まだ体操服の佐瀬が登場した。文化祭以来の近距離佐瀬だ。どんな反応をされるかとドキドキしていると、佐瀬は以前までと変わらない爽やかな笑顔で俺を見た。
「なんか久しぶりだね、景太」
「う、うん。久しぶり。陸上部に戻ったんだね」
「うん!やっぱり運動は楽しいよ!……で、蜂谷ちょっと来て」
「え、僕?」
佐瀬は蜂谷を引っ張っていき、ちょっと離れた場所で内緒話をしている。どう考えても怪しい。
1分後、蜂谷は1人で戻ってきて、うんざりした様子で言った。
「たこ焼きでいい?」
「…ん?何が?」
「奢ってくれるんでしょ」
「あ、あー!いいねたこ焼き!」
「僕片付けあるから、駅前のフードコートで待ってて」
「オッケーありがとう!」
絶対佐瀬に何か言われている。でもまあいいか、来てくれるなら…。
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