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日常
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翌朝、再び椿原が家の前で待っていた。
「おはよう川名…ごめん今日も来ちゃって…」
椿原はなぜか恥ずかしそうにもごもごとしゃべっている。
「おはよー。体調はどう?」
「う、うん。もう平気。本当に」
「それならよかった…なんでそんなにもじもじしてるの?」
「いや…別に…」
「??」
「えっと、やっぱ聞きたいんだけど…」
「何?」
こんなに躊躇っている椿原はレアだ。そんなに聞きづらいことがあるんだろうか。
「昨日は何の用事だったの?」
「…え?そんなこと?」
「だって…気になってたから…」
「蜂谷とたこ焼き食べた」
「えっ、蜂谷?仲悪いのに、なんで?」
「昨日和解したんだよ」
「うん…?」
椿原は怪訝そうに首を傾げた。
「とにかく蜂谷は友達ってこと」
「友達…」
全部説明したのに、椿原はまだ何か言いたそうな顔をしている。椿原の慎みは、俺にはよく理解できない。
「ツバキ、どうしたの?たこ焼きが羨ましいの?ごめんね、誘わなくて」
「たこ焼きは、いいんだけど…」
「何?すぐ言わなかったら俺無視するよ?」
「かっ……川名は…俺のこと好き?」
「え?」
椿原は顔を真っ赤にして口元を隠した。
「な…なんでもない…」
「好きだよ?前も言ったと思うけど…」
「えっと…どれくらい?」
「は?」
「蜂谷と仲良くなっても変わらない?」
「蜂谷なんて関係ないじゃん。どれだけ仲良くなっても、1ミリも影響しないよ」
「だったら…もし佐瀬が戻ってきても、俺のそばにいてくれる?」
「あのさぁツバキ…」
俺は椿原の腕を掴んで立ち止まった。
そしてこっちを見ようとしない椿原を後ろからぎゅっと抱きしめた。
「ツバキ、かわいすぎ」
「えっ」
「なんでもないふりして、すっごい気になってるんじゃん。どうしてすぐ強がっちゃうの?そうやって正直に言ってくれればいいのに」
「…嫌われるのが怖いから。佐瀬みたいに素直にはできない」
「大丈夫だよ。俺よっぽど人のこと嫌いにならないよ」
「ちょっとでも好感度が下がったら嫌なんだ」
「大丈夫大丈夫。下がんないって。ついでに正直に教えてよ。ツバキは俺と付き合うの、嫌?」
「……嫌だ」
椿原は俺の手に手を重ね、静かに体を解いた。
「川名と性的な関係になりたくない」
「…つまり、セックスしたくないから付き合いたくないってこと?」
「ま…まあそう…」
椿原はいつのまにか落としていたカバンを拾い、駅の方へすたすたと歩き出した。
「ツバキはつらかったんだね」
「何が?」
急いで追いついて声をかけると、椿原はいつもの冷静な調子に戻っていた。
「由比とのこと」
「4回もレイプされてるのにぴんぴんしてる川名にはわかんないよね…」
「まああれは、こっちが悪いし」
「川名と付き合ったらさ、きっとすごく楽しいし、幸せだと思うんだ」
「うん?」
唐突な褒め言葉に戸惑っていると、椿原はにこっと笑った。
「幸せになるのは怖い。いつか失う時が来るから」
「…蜂谷の言った通りかもな」
「え?」
俺はめんどくさい男に好かれるし、めんどくさい男を好きになるらしい。
なんでそういう悲観的な思考回路を辿るのか、俺にはさっぱり理解できない。
「ツバキは一生、俺のことをただの友達だと思っていればいいよ。俺は勝手にツバキのこと、恋人だと思って接するから」
「何それ?」
「ツバキの嫌がることはしない。ツバキは俺の恋人で、俺はツバキの友達。それならいいでしょ?」
「そんなの、気の持ちようじゃん」
「そうだよ。ツバキの気持ち次第で、恋人にも友達にもなる。そんな曖昧な関係が、ツバキにとって一番居心地がいいでしょ?」
「………」
「名前なんてなんでもいいよ。ツバキと一緒にいられるなら、恋人でも、友達でも、性奴隷でも」
「……性奴隷は頭イカれてると思う」
椿原はふっと笑って呆れた様子で呟き、俺の手を握った。
「早く学校行こう」
「え?え?手繋ぎ登校?熱い!熱いね!」
「………」
「ちょっと!無言で離れていくなよ!ツバキー!」
おわり
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