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35.(過去【悠編】2.)
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side悠
「正直、今でも思い出すとどうしようもないくらい不安になります…」
「……」
「俺なんかよりもっと辛い思いをしてる人はいるのに、こんな小さいことで情けないっていつも思うんですけ、ど…」
言葉の最後が止まりそうになったのは、組んでいた手を慧杜のそれに包まれたからだった。
自分の手に視線を落とすと、握り締め過ぎて白くなっており、そしてその手は小刻みに震えていた。
「俺なんかじゃないですよ。感じ方は人それぞれですから辛いと感じることも人それぞれ…俺なんかじゃ決してありません」
「で、も…」
「…そう感じているのは、以前神木さんにカウンセリングをした人が原因でしょうか…」
俺がカウンセリングに対して前向きな気持ちでない理由…
初めてカウンセリングを受けたのは高校1年生のとき。
カウンセラーは俺の話を聞くと、たったそれだけかと言った。社交辞令で自然に話せているように見せていたが、普通に会話ができているからトラウマじゃない、カウンセリングの必要はないと全否定された。
人に過去のことを話すのが元々苦手だったのに対し、追い打ちをかけられた気分だった。
「……」
「慧杜さん…?」
「あ、すみません」
俺の話を聞いている途中から表情が曇っていた慧杜に、気を悪くしてしまったのではと焦ってどうしたのか尋ねる。
「…カウンセリングはまず相手の話を聞くことから始まります。なので相手の話を否定することは絶対にしません」
「そう、なんですね…」
「だから、神木さんは自分の辛さをなかったことにする必要はないんです…」
「っ…」
辛さを隠す必要がないと言われ、止まっていた涙がまた出てくる。
自分の気持ちをなかったことにしなくて良い、そうはっきりと言われ今まで我慢していたものが溢れ出た。
「ぁ、ありがと…ございます…」
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