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「ねぇ、君…」
「ぇ…ぁ、はい…」
隣に座った彼は俺を優しい目で見つめて、話しかけてきた。
「名前を聞かせてもらえないかな?俺は東條智祐」
「…冬雪千世です…」
「千世くんか…」
いい名前だね…と智祐は優しく微笑んだ。
これが智祐との出会いだった。
智祐と出会ってから2ヶ月ぐらいが経っていた。
あれからは毎日のように智祐と会って話をした。
彼とするのは他愛のない話だったが、俺にとってはとても幸せな時間だった。
智祐は俺と話すときいつも優しく微笑んでいた。
新の家に引き取られてから、こんなに優しい表情を向けて話をしてくれる人はいなかった。
そう考えていると、智祐がとても驚いた顔をした。
すると俺の頬にそっと手を添えまた柔らかく微笑んだ。
「どうしたの?俺が何か辛い想いをさせてしまったかな…?」
言っている意味がわからなかったが、彼が目元をそっと拭ったことにより初めて自分が泣いていることに気づいた。
「ぇ…あ、ごめんなさいっ」
「千世くんが謝ることじゃないだろう?」
「でも…」
「すぐに謝ったらダメだ。君が何か悪いことをしたわけでもないし、涙が出るのは人間なら当たり前だから」
彼は俺の涙を拭いながら少し苦しそうな表情を浮かべた。
そんな彼を見ているとこんな表情をさせたくない、とそう思ってしまった。
(なんでだろう…)
そっと智祐の頬に手を添えた。
「ん?」
「そんな顔しないで…」
「ぇ…」
ハッとして手を離す。
「ぁ、ご、ごめんなさい…」
「さっきすぐに謝るなって言っただろう?全然嫌じゃなかったから、大丈夫。それでどうしたの?」
「…なんか、悲しい顔してたから…」
智祐は驚いた顔をすると優しく微笑んで俺を抱き締めた。
「ぇ、あの…」
「悪いな…なんか可愛くて。このまま攫っていいか?…クス…なーんてね。うそ…」
「いいですよ。俺をさらっても…俺なんかをさらってくれる人がいるなら、こっちからお願いしたいくらいです…」
こんなことを言ったら智祐を困らせるだけ、そう思いながらも言葉を紡ぐ。
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