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「宮本くん、会議所の神崎君から電話。」
手元の電話が鳴り、それを手にとる。主幹の児島から外線電話が回ってきた。
「お電話変わりました。商工観光課の宮本です。」
『会議所、神崎です。今、修正した明細をメールで送ったけど確認できる?』
「少々お待ち下さい。、、、あ、これですね。」
昨日、宮本が指摘した数字の間違いを修正し、確認のため神崎が1つずつ読み上げていく。
10月下旬。この時期、市役所では次年度予算編成の最初の山場となる。宮本が所属する商工観光課は、基本的に関係各署の補助金の算出がメインで行われ、特に多きな金額となる商工会議所との擦り合わせを9月頭から行っていた。それでも出てくる計算ミスに辟易しながらも、3日後に控えた経済部長査定に備え市担当者も会議所担当者も残業必至で数字を積み立てていた。
今年の4月に新規採用職員として雇用された宮本飛鳥(あすか)は、初めての予算編成を不馴れながらもそれをこなしていった。
「ありがとうございます。助かりました。」
『こちらこそごめんね。課長が夕方まで出張だから、本書は明日の朝イチに持ってく』
本来、この書類の担当者は会議所の観光課長だったのだが、出張で変わりに主任の神崎が緊急で書類を作成した。
「大丈夫です。木下課長が出張に入る前に気付けばよかったのですが、、、」
「あの人の数字間違いはよくあることだから。宮本くんも初めてなのに要領いいから凄いね。」
思いがけず誉められたことに驚く。神崎はとても声がよく、話していると心地が良い。今は電話なので顔が見えないが、中性的な顔立ちでとても整っており、背は高くないものの綺麗な人物だ。とても自分よりも10も歳上には見えない。
男女問わず綺麗なものが好きである宮本にとって、神崎と仕事をするのはとても気分がよかった。
「ありがとうございます。神崎さんに誉められるなんて、今日はいいことあるかも。」
「槍でも降らなきゃいいがな。」
「何いってるんですか」
笑いながら電話を切る。
仕事を初めて半年。商工観光課と商工会議所が一緒に仕事をする機会はたくさんあった。小さなものでは合同主催のセミナーに始まり、大がかりなものは季節の祭りや花火大会等。行事の打ち上げと称して懇親会を幾度となく行い、それぞれの職員とはかなり仲良くなった。外部機関であるものの、仕事で関わることが多いので管理職以下の職員とは軽口を叩く仲だ。それぐらいにならないと、仕事が円滑に進められない。元々社交的な自分としては、この環境に慣れるのは早かった。
加えて、自分で言うのも難だが、要領は良い方だ。女性たちとは直ぐに打ち解けられ、男性職員とも酒や麻雀、果ては風俗店にも一緒に遊びに行き、懇親を深めてきた。元々大学時代から、殆どの娯楽を経験してきたため、社会人になり、自由になる金と時間ができた今、益々遊びも派手になってきた。
今日は久々に大学時代の友人と都心で遊ぶ約束をしている。木曜日、しかも繁忙期であるが今日は19時には退社して飲み会に合流しようと思っていた。予算の担当箇所も先程神崎と話していた一件で全ての入力が終わる。残った雑務は明日何時までいいからでも残業して、土曜日は1日中寝ていようと決めた。
再び手元の電話が鳴る。3コール、外線電話の合図だ。
はぁ、と一息付き頭を切り替えて受話器をとった。
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