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熱誠カタルシス ーあきらめ、ない。ー6
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今までの会話を聞かれたわけでもないのに、律基は気まずそうに俯いてしまっている。
入口に立つ綾世は無表情でこちらを一瞥すると、颯斗達の存在など無かったかのように、自動販売機へとまっすぐに向かった。
ここの学生ホールは生徒会室に一番近い。
生徒会の役員が利用するのは当たり前と言えば、そうなのだ。
颯斗は、綾世のことをずっと見ていた。
白い陶器の人形のように綺麗な横顔は、決してこちらを見ようとはしない。
「おい、櫻木一人じゃ無理だろう。袋、持って来た」
綾世を追って、また一人学生ホールに入って来る。
それは、綾世と共に1年本部委員を務める生徒会役員。
「さすが周防。気が利くな。ところで…周防はなに飲むんだっけ?」
「俺、コーヒー。微糖のやつな」
颯斗は、そんな会話を黙って聞いていた。
スーパーのレジ袋に10本近い缶ジュースを放り込み、二人は出入り口へ向かう。
周防が扉の向こうに消え、綾世が出入り口に差し掛かった時、颯斗は意を決して立ち上がり声を掛けた。
「綾世!!」
颯斗の声に、ゆっくりとこちらを向いた綾世の動きが一瞬止まり、視線が重なる。
でもそれは、ほんの一瞬。
綾世はやっぱり、知らぬ顔で出て行ってしまった。
あの時と、同じだ…。入学式の日と。
綾世は颯斗に気付いていないのではなく、あきらかに避けているのだ。
「あ~~…凹むよ~~」
頭を抱え座り込む颯斗に、律基がボソリと言う。
「櫻木さん、幹くんのことを大切に思っているんだね……」
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