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熱誠カタルシス ー希望ー4
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それは再会以来、綾世が初めて颯斗に見せたわずかな表情の変化。
このまま、時が止まってしまえばいいのに…。
颯斗にとってはとても長く感じられた時間だけれど、それは数秒の短いものだった。
颯斗は茫然と、去ってゆく綾世を見送った。
「今、櫻木さん。幹以外は『Out of 眼中』じゃなかったか?」
「西嶋くん…なに櫻木さんの視界に入りたがってんの? ズーズーしいよ」
「川那辺…お前、毒だらけだよな……」
西嶋の言葉に、律基が口を尖らせ横を向く。
「さーてと。 じゃぁ、幹はこれを頼むな!」
西嶋がA4の分厚い茶封筒を目の前に置く。
中を見ると、朝のホームルームで回収したクラス分のアンケート用紙が入っている。
「なに、これ?」
「放課後に、1年生の委員長会議があるんだ。でも今日は、それの回収と連絡事項受けるだけだから、幹が代わりに行って来てよ」
「はぁ? 代わりにって…」
「それで『貸し借りチャラ』ってことで、ヨロシク!」
「おいっ、ちょっと…!」
西嶋は颯斗の声など聞こえていないかのように席を立ち、パンを咥えたまま行ってしまう。
あいつは、これを押し付けるために綾世のことを教えてくれたのか…?
「委員長のくせに…無責任な。どうするよ…」
途方に暮れる颯斗に、律基が明るく言う。
「幹君、よかったね!」
「なにが…?」
当惑顔で、律基を見やる。
「1年の委員長会議ってことは……招集掛けてるの、1年本部委員だよねっ!」
「あっ…!」
“1年本部委員”ってことは……綾世に会える!
「西嶋くんってば、いいカッコしいなんだから~」
律基はクスリと笑う。
颯斗は、西嶋に心の底から感謝した。
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