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熱誠カタルシス ー偽りと、真実。ー5
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「なに言ってるのさ。 そんなはず、ないよ! 櫻木さんは、幹くんに友達が出来た事とか知ってたんでしょ? それは幹くんの事をちゃんと見ていたって、ことだよ。 必要ない人の事を、そんなに気にしたりしないよ!」
颯斗の弱音を律基が力強く否定する。
何でそこまで言い切れるのか…。
でも今は、律基の言葉が有難い。
窓から、外廊下を見下ろす。
外は、颯斗の泣きたい気持ちに共鳴したかのように、雨が降り始めている。
今日のような天気の日に、屋根の無い外廊下を利用する生徒は居ない。
綾世はあそこから、この窓を見上げていた。
入学してから、ずっと……綾世を探して、ここを留守にしていた颯斗も。
いじめにあい、机に伏せ落ち込んだり、うつろに空を見上げていた颯斗も。
クラスメイトと楽しく笑い合う颯斗も……全てあそこから見ていてくれていた…?
颯斗は、そっと目を閉じる。
そして、自分に問いかける。
『俺は、どうしたいんだ…?』
もっと、綾世のことを知りたい!
綾世が颯斗を見ていてくれたように、綾世を見つめていたいと思う。
綾世が…好きだ……。
「幹くん…?」
黙り込んでしまった颯斗を、律基が心配そうな顔で覗きこんでいる。
「川那辺…、ありがとう。 俺さ、せめて綾世に自分の気持をちゃんと解かって欲しいと思う。 だからまずは、とにかくちゃんと伝えなきゃ、だよな…」
「うん…そうだよ!」
「よっしゃぁ!そう決めたら、なんだかやる気になってきた!!」
自分自身を奮い立たせるように、わざと大きな声で意気込む。
そんな颯斗に、律基は穏やかに微笑んだ。
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