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熱誠カタルシス ー偽りと、真実。ー12
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「綾世! おはよう」
颯斗は、敢えて明るく挨拶をして駆け寄ろうとする。
「来るな!何の用だ。俺とお前は、なんの関係も無いだろう…?」
はっきりとした、強い拒絶。
けれど今の颯斗は、綾世のどんなに冷たい言葉にも怯んだりはしない。
綾世のことを本当はよく理解している律基が、綾世は『突き放すことで幹くんを守ろうとしている』と、言った。
その言葉を信じる!
だからどんなに冷たくあしらわれても、それは綾世の颯斗に対する優しさなのだ。
綾世は優しい……そのことは颯斗もよく知っている。
だからどんな言葉を向けられても、本心からじゃないと思えば全然平気だった。
それに、律基が『櫻木さんは誰にでも気さくな対応をする』と、言っていた。
けど、颯斗には一度もそんな態度を取ったことは無い…それも自分が綾世にとって特別だからなのだと思うと、嬉しくさえ思えてしまう。
颯斗は綾世に近づき、腕を取った。
綾世は俯き、決して颯斗を見ようとしない。
「綾世…俺、お前が居るから少しでも一緒に居たいと思って必死に勉強して聖藍に来た。でもそのせいで、まさかここまで徹底的に嫌われるとは思ってなかったけど……」
冷静になってみると、不思議と今までのことも客観的に見えてくる。
綾世は颯斗と視線を合わそうとしない。
例え合っても、すぐに逸らされた。
綾世と出会い、一緒に過ごした去年の夏休みを振り返る。
人と話をする時、綾世は必ず相手の目を真直ぐと見た。
ブルーグレーの澄んだ大きな瞳。
いつも颯斗は、吸い込まれそうだと思っていた。
その瞳は今、颯斗に向けられる事はもう無い。
けれどそれは、颯斗をわざと突き放そうとしているからで、きっと綾世にとって不本意で後ろめたい思いがあるからこそ、視線を合わせられないでいるのだ。
「なんで……なんで聖藍に来たんだよ…。お前とは、なにも接点が無いから…だから少々親しくしてもいいと思ったのに。けど聖藍の人間になったんなら、今後一切俺に関わらないでくれ!」
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