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熱誠カタルシス ー熱誠、カタルシス。ー8
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こんなに落ち着いた気持ちで綾世の顔を見るのは、約半年振りだろうか…。
去年の夏より少し大人びた綾世は、益々綺麗だ…。
颯斗は、前に座る綾世に釘付けになる。
こんな風にごく自然に他愛ない話をして、一緒に時を過ごせることをずっと望んでいた。
それが今やっと、現実になっている。
そう思うと、嬉しさがこみ上げてくる。
「都合がいいと思ったから、颯斗を保健室送りにしたんだよ」
「さっすが綾ちゃん!」
綾世と颯斗の視線が重なる。
重なった視線は、決してそらされることは無い。
それどころか、綾世の目は微かに細められる。
「颯斗…あんまり無茶なことするなよ。 初めて会った時も、そうだっただろ…」
「え…まぁ……。 つい…」
綾世が初めて逢った時のことを口にしたことが……颯斗の心配をしてくれることが嬉しくて、頬が緩む。
そして颯斗も、初めて会った時のことを思い出す。
一目見た時から、視線を逸らせなくなっていた。
綾世の事をもっと知りたい…あの時の思いは今も尚、変わらない。
それどころか、思いは益々募る…本当の綾世をもっと知りたい。
「…ありがとう。……でも、颯斗は後先考えないバカだよね」
今までと変わらない抑揚の無い声。
けれど、決して冷たいわけではない…颯斗にはそう聞こえた。
「綾世、ひっでぇ…」
と言いつつも、颯斗の顔はしまりが無い。
綾世はさらに続ける。
「それからひとつ言っておくけど、僕の方が一応先輩だから颯斗は呼び捨て禁止!」
「え…? じゃぁ、川那辺は?」
「律は…身内だから『綾ちゃん』でも許す」
颯斗の問いに、綾世は答える。
律基は満面の笑顔で、嬉しそうに颯斗を見た。
「川那辺~、なんだよその勝ち誇ったような顔は! そんなの、ずっりぃ~よ~綾世~…」
「呼び捨て禁止!」
すねる颯斗に、綾世はきっぱりと言う。
そう、綾世は礼儀やけじめにとっても厳しい。
また、そういう所も大好きなのだが……。
「綾世さ~~ん・・・」
颯斗の情けない呼びかけに、綾世はエクボの可愛い極上の微笑を返した。
『熱誠カタルシス』END
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