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伝える、ということ。ー綾世side-ー 4
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「俺は、綾世さんと一緒に遊びに行けるのをすっごく楽しみにしてた。 映画に行こうか、ちょっと遠いけど新しく出来たモールにしようか、ずっとあれこれ考えて…計画立てて。昨日なんか、楽しみ過ぎて全然寝られなかったんだぞ!」
口をへの字に曲げ、拗ねる様子は本当に小さな子供のようだ。
けれど、綾世は感情をストレートに伝えてくる颯斗に戸惑う。
他人との関わりを避け、上辺だけの付き合いしかして来なかった綾世にとっては、どう返していいのか分らなかった。
自分の気持ちを相手に伝えるというコミニケーションは、親しい友人を作ることを拒み続けてきた綾世にとって、ずっと必要の無いことだったから…。
「………」
颯斗の顔を見つめたまま黙り込んでしまう。
そんな綾世に、今度は颯斗が戸惑っている。
何があってもいつも冷静で、顔色ひとつ変えることなく堂々としている綾世。
だけど今、颯斗の言葉に戸惑っている。
「えっと……別に、困らせたいわけじゃないよ。綾世さんは、俺と出掛けるのは嫌だった?」
颯斗の口調が急に柔らかくなる。
なにがこんなにも、綾世を戸惑わせてしまったのかが解らず、この状況を何とかしようとしているようだった。
「…嫌じゃない。 むしろ、楽しみにしていた……でも…」
「でも?」
『遊びに行く』という、初めての外出だから……。とか、そういうことではなく。
綾世にとっては、『颯斗と一緒に』というのが重要だった。
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