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伝える、ということ。ー綾世side-ー 5
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そもそも基本的に出不精で、常に合理的に動き無駄なことをしない綾世が、目的もないのに出掛けるということ自体、本来ありえないこと。
でも、あまりにも熱心に(しつこく)誘って来るものだから、根負けしたというか…。
颯斗とだったら、出掛けてもいいか……と、思ったのだ。
「でも…今日はもう会えないだろうと思っていたのに、思いがけず顔を見れたから……嬉しかったよ…」
素直な気持ち。
これでいいのか?
颯斗が聞きたいと言った『綾世の気持ち』は、ちゃんと伝わっているのだろうか……?
綾世のボソリとした呟きに、颯斗はみるみる赤くなる。
的確なことを辛辣に言い放つ、言葉をオブラートに包むということをしない綾世。
でもこんな自分の気持ちまでも、ここまで直球に口にするとは思っていなかったようで。
これは、いつもとは違った意味で颯斗にとっては、めちゃくちゃキツイ言葉だったみたいだ。
颯斗が身を乗り出し、今度は綾世の両の手をがっしりと掴む。
「じゃ、じゃあ! 俺、今日一日ここに居てもいい? 絶対、邪魔しなから!!」
「いいけど…? それじゃあ、いつもと変わらないだろ?」
真っ黒に日焼けした颯斗の顔に、真っ白な歯が眩しい。
細い目をさらに細めた、屈託のないさわやかな笑顔。
「全然、違うよ!ちゃんと聞けたから。綾世さんの本当の気持ち。だから、今までとは全然違う!!」
一人でにやける颯斗を、不思議気に見る綾世は、よもや自分の言葉がその“にやけ”に大きく影響しているとは思ってもいない。
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