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伝える、ということ。ー綾世side-ー6
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「もっといろんな事…綾世さんが思ったことや感じたこと……ちゃんと、俺に伝えてね」
「………」
まっすぐ向けられた眼差しに、綾世の頬が微かに赤らむ。
「颯斗。 お昼、食べて行くよね?」
いつもと変わらない、綾世のセリフ。
けれど、今日はその後にも言葉を続けてみる。
「颯斗と一緒に…食べたい。……かも?」
言ってしまった後に、凄まじい後悔。
なんだかとっても恥ずかしい。
いつもは言わない言葉まで口にはしてみたものの、こんな気持ちまで伝える必要があるのだろうか…?
どこまで自分の気持ちを伝えたら良いのだろうか……伝えるというのは、こんなにも恥ずかしいことなのか…?
俯いてしまった綾世は耳まで真っ赤になっている。
無感情人間と評される綾世のこんな姿、颯斗以外の誰も見たことないだろう。
思わず抱きしめてしまいたい。
そんな思いを、颯斗はグッと堪る。
そんな颯斗の胸の内を、綾世は知るよしもない。
「なんで疑問形だよ!『食べたぁい!』って、可愛く言ってくれたらいいのに……」
「絶対、言わない……」
嬉しくって堪らない颯斗の満面の笑みに、綾世は小さなため息を漏らした。
この先何度も、こんなに恥ずかしい思いをしなくてはならないのか……?
「俺が作るよ。リクエストある?っても、チャーハンくらいしか作れんけどね」
颯斗のありがたい申し出。
中華食堂の次男坊が作るチャーハンは絶品だ。
「じゃあ、お任せするよ」
「了解!」
颯斗は敬礼のポーズをして、満面の笑顔を向ける。
笑顔に応えたい……。
その思いのまま、綾世は微笑み返した。
颯斗は思わず息を呑む。
それほどに美しい微笑。
颯斗だけに向けられた、綾世の心からの笑顔だった。
『伝える、ということ。』END
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