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純真メランコリー14
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バスの発着に間に合うだろうか。
「そゆこと!悪い、川那辺!!俺、ダッシュする!!」
「幹君の足なら間に合うかもしれない!」
ベンチの上に放り投げていた荷物を鷲掴む。
「おお!健闘を祈れ!じゃあな」
「うん、祈る!頑張って!!」
特別棟の学生ホールを飛び出し、陸上部が基礎トレーニングをしていた渡り廊下を駆け抜け、校舎内を玄関へ向けて猛ダッシュ。
先生に見つかったら、確実に説教されるレベルの激走。
走る廊下から、ちらりと覗いた教室の時計の針がバス発着の時間を差す。
下駄箱からスニーカーを取り出し、上履きを放り込む。
傘置き場で自分の傘を握り、外へ飛び出す。
結構な大粒の雨。
でも、悠長に傘なんてさしている場合じゃない。
颯斗は濡れたコンクリートへ大きく踏み出すと、校門外のバス停を目指す。
雨降りの影響で5分…いや、10分…それくらいの遅れがあるはずだろう。
いつもはその遅れをイライラしながら待つのに、今日はいつもの倍くらい予定時刻に遅れる事を願う。
正門を通り歩道に出て、バス停に視線を向ける。
「げぇっ!嘘…」
大幅に遅れて到着すると見込んでいたバスは、ブザーと共にたった今乗り口のドアを閉めたところだった。
「のっ、乗ります!」
叫びながら、大きく手を振り上げた拍子に抱えていた雨傘が落ちる。
あぁ!
それを拾い上げようと屈んだ颯斗を置き去りに、無情にもバスは走り出した。
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