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純真メランコリー 15
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「乗るっ!乗ります!!」
ダッシュで追いかける。
もし晴れていて、バスの窓が1個でも開いていたら、誰かが気が付いて止まったかもしれない。
けれど、颯斗の叫びは雨音に掻き消され届かない。
バスの後部座席に、綾世と思われる頭が見える。
「綾世さん…!綾世ってば!!」
どんなにその名を呼んでも、振り向きはしない。
綾世の隣に座るマークが、ふとこちらを見て目が合ったような気がした。
マーク!
運転手に言ってバス止めろッ!
声に出す余裕などなく、心の中で叫びながら大きく手を振る。
そんな颯斗を見て、マークが微笑んだ気がした。
あぁ…これで止まる。
颯斗がそう思った瞬間、バスが急に速度を上げた。
えぇ!
嘘だろ!?
後部座席のマークを見ると、彼は綾世と並んで前を向いて座っていた。
颯斗がどんなに願っても、もぅ後ろを振り向かない。
どんどん速度を上げるバスは、あっという間に見えなくなってしまった。
ずぶ濡れの颯斗は、徐々に走る速度を落とし、いつしかその場に立ち止まり、大粒の雨に打たれながら佇んでいた。
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