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純真メランコリー 19
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なんて言ったのか、聞き取れない…。
マークは颯斗の身長に合わせるように、前屈みで前に立つ。
「え~っと…ワンスモァプリィズ…?」
『もう一回言って下さい』って、これでいいんだよな?!
「Come again?(なに?)」
「へ…?」
何て言ったんだ…?
通じてないじゃん?!
「え…あの……」
突然『バンッ!』と、颯斗のどもりを打ち消すように、大きな音がした。
ハッとする。
驚いたマークも、音のした後方を振り返った。
マークと向き合う体勢だった颯斗は、その後方の決定的な瞬間を見てしまった。
いつも冷静な無感情に見える綾世が、一瞬忌々しげな表情で、職員室のドアを握った拳で叩いたのだ。
思いっきり一発、殴るように…。
周りに居た人達も動きを止めてこちらに注目している。
「………綾…世?」
「Mr.Mark will go!(マークさん、行こう!)」
そう言って、綾世は背を向けると歩き出す。
その表情は、いつもの無表情だった。
マークは踵を返すと、その後を追う。
それと同時に、止まっていた周囲の人々もざわざわと動き出す。
あっ気に取られる颯斗を残し、二人は一度も振り返らないまま角を曲がり、視界から消えた。
颯斗はしばらく、その場を動けずに唖然と立ち尽くしていた。
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