アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
純真メランコリー 26
-
*****
「あっ!綾世!!」
颯斗は2年生の教室が並ぶ3階の廊下を綾世の教室へ向かっていた。
そこで綾世を発見して、大声で名前を呼んだ。
颯斗の姿を確認した綾世は、その場で立ち止まる。
その表情が…。
いつも無表情な綾世が、今朝と同じ様に傍目にも怒っているのだと解るほどの険しい表情をしている。
いや…今朝とはちょっと違う。
眉根を寄せ瞳を潤ませ、怒っているのだけれど……泣き出してしまいそうにも見えるのだ。
……なんで?!
綾世が颯斗に向かって叫ぶ。
……えっ?
なに?!
聞こえないっ……!!
大きな声のはずなのに、颯斗には何も聞こえない。
感情むき出しで叫ぶ綾世は、いつもとはまるで別人だ。
「……ろっ」
は……?
「……き…ろ」
「…う~ん…綾世ぇ……」
「おいっ、幹!…やばいって……」
「うぅ…ん~…?」
「幹颯斗!ごぉらぁ起きろっ!!」
突然大声で名前を呼ばれたと同時に、頭に受けた強い衝撃で目を覚ます。
「ってぇぇ~…」
頭を押さえて顔を上げると、目の前に丸めた教科書を持つ英語教師の阿部ちゃんが立っている。
先生が持っているそれで、頭を強かに殴られたのだ。
「幹颯斗…居眠りとはいい度胸じゃないか!授業を聞く必要もないとは、さぞおデキになるんだな……」
「え……?いやっ!あの…」
阿部ちゃんの嫌味…颯斗の英語はいつも赤点ギリだ。
「"long time ago"を訳せ!」
間髪入れずに問題を振られる。
「えっ?あの…長い……時間…アゴー…えっと………」
『アゴ―』ってなんだ?
ヒントを貰おうかと先生を見遣ると、視線が阿部ちゃんの顔に釘付けになった。
「えーと…『アゴ』……」
立派なしゃくれ顎……。
『アゴ―』…って、もしかして「顎」?
『アゴ』って名詞か…!?
「おいっ、幹!お前が思ってるの、それ絶対違うぞ…」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
104 / 189