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純真メランコリー 29
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結局、2年の教室に向かった颯斗は綾世に会うことは出来なかった。
次の授業のチャイムが鳴り、慌てて教室に戻った颯斗にクラスメイトから声が掛かる。
「幹君!どこに行ってたの?さっき櫻木さんが訪ねて来たんだけど…」
「えぇ!マジでぇ~…」
行き違いじゃん!!
綾世が個人を訪ねて、しかも下級生の教室に来るなんてそうそうあることじゃない。
なにか大事な話があったんじゃないだろうか…。
「綾世さん、一人だった?」
「え…?うん」
「そっか…」
さっき訪ねた2年の教室で、綾世のクラスメイトから、綾世はマークの校内案内などで休み時間はほぼ不在だと教えられた。
だから、てっきりマークと一緒に学園内をうろうろしているのだと思っていた。
「幹。川那辺…かなり滅入ってるみたいだったけど、櫻木さんのことではっきりした情報あるか…?」
急きょ、先生の都合で自習になった現国の時間。
課題の漢字書き取りプリントを手先だけで片づける。
こんなことなら授業に間に合うように慌てて帰って来ないで、2年の教室前で綾世を待っていたらよかった…。
「うんにゃ。会えんかった」
「そっか…。川那辺、早く安心させてやりたいんだけどな…」
「……うん…」
律基だけではなく、自分自身も、早く綾世と話して安心したい。
「川那辺って櫻木さんのこととなると、すっごいナーバスになるからな……」
西嶋がボソリと言った。
「……だよな」
普段は明るくて、細かいことなど気にしないのに。
「あれって、やっぱ例のいじめの一件があって…なのかな…?」
颯斗の呟きに、西嶋は腕を組み小さくため息を漏らす。
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