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純真メランコリー 31
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綾世に会えることなく、颯斗は昼休みは保健室へ向かう。
律基は午前中ずっとベッドで休んでいた。
そして、弁当を届けた颯斗と西嶋は、例のごとく食後のコーヒーと引替えに三田先生に留守番を任されていた。
不良校医め…。
「…でもな。父親の親戚が現れたからって、いきなりそっちに…。しかも、国外に行きます!ってのは、なくないか?櫻木さん、お祖父さんとうまくいってないって訳じゃないんだろ?」
三人で机を囲み、弁当をつつきながら西嶋が言った。
「うん。祖父さん孫バカだし…」
颯斗に綾世の話をする祖父さんは、本当にベタ褒めで全然二人の間に何か問題があるようには思えない。
「こう言っちゃなんだけど、川那辺の思い込みって可能性もあるんじゃないか?」
「…でも、じゃぁ川那辺の母親が言ってたことは?」
律基は母親から『綾世が外国に連れて行かれる』と聞いている。
「それもさ…。詳しい話は聞いてないんだろ?今の川那辺の状態だったらマイナスにしか考えられないとか――って、ありえねぇ?」
「すっげぇ西嶋!それ、ありうるような気がする!!」
西嶋が言う事がだんだん本当のような気がしてきた。
弁当を食べるでもなく、つつきながら黙って聞いていた律基がボソリと呟く。
「…わからないよ……」
「「は…?」」
顔を上げた律基の表情は暗い。
「お祖父ちゃんも僕の家族も、綾ちゃんにはどこにも行って欲しくない……」
「だったら、尚更大丈夫なんじゃないか?だって…櫻木さんが父親方の親戚に引き取られる必要ないだろ?」
西嶋の言葉に律基は頭を小さく左右に振る。
「…でも。…綾ちゃん本人の気持ちは分からないじゃん!」
は………?
本人の気持ち…?!
「えっ!?ちょっと待って!それって、綾世さんが自分から望んで外国に行くってこと?!」
「だから、わかんないのっ!」
律基が声を荒げた。
「『わかんない』って、なんだよ!?どういう事なんだよ!!」
颯斗も、つい声が大きくなり、律基を問い詰めるような口調になってしまう。
「ちょっ!落ち着けって二人とも!!」
西嶋が二人を制止し、穏やかな口調で律基に訊く。
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