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純真メランコリー 32
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「なんで川那辺は、そんな風に思うわけ?」
「思い出したんだよ…。僕が不登校になった時、綾ちゃんが言ってたこと……」
律基は俯いて、ボソボソと話し始めた。
「綾ちゃん…『ごめんね。僕が居るから……他に行く所がなくって…。僕がここに来たせいでみんなに嫌な思いをさせてごめんね…』って…。その時僕は、綾ちゃんが自分のことをそんな風に思っているのかと思うと涙が止まらなくなって……何も言えなかった。でもそれって、行ける所があったら居なくなっちゃうってことでしょ?」
律基が潤んだ瞳で顔を上げた。
「でも!それってまだ子供の…小学生の時のことだろ?! 今は……」
「ちょっと待て!今『みんなに』って言った?」
は…?
『みんな』?
そんなこと言ったか…!?
細かい所を聞き逃さない西嶋に感心する。
「………」
「でも、それは"友達にも"ってことだろう?!」
西嶋の問いに黙り込む律基に、颯斗がさらに訊く。
「……たぶん…違う……」
「えっ?じゃぁ、"みんな"って誰……?」
ドアをノックする音に会話が止まる。
「失礼します」
そう言って入ってきたのは、綾世だった。
「颯斗のクラス行ったら、ここだって聞いて来たんだけど…」
休み時間に行き違いになってから、下手にチョロチョロしないで教室に居た方が会える確率が高いのではないかと西嶋に助言された。
そして昼休みも、一応綾世が訪れる可能性もあるだろうとクラスメイトに伝言を頼んでおいたのだ。
すげぇな。西嶋の読みは正しかった。
「颯斗が具合悪いって訳では…なさそうだね……」
颯斗と目が合うと、無表情な綾世が少しだけほっとした表情を見せたような気がした。
……え?
もしかして、心配してくれたのか?!
綾世が今朝のように怒っている気配は感じられない。
あれは…なんだったんだろう……?
「放課後のことなんだけど、しばらく学生ホールには行けそうもないんだ。そういうことだから、颯斗ごめん……」
綾世がわざわざ教室まで来て話したかったことってそのことだったんだ…。
もっと大事な話があるのではないかと思っていた…。
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