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純真メランコリー 33
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外国行きについての話じゃなかったのか…。
「…そう……」
そのことについていろいろ訊きたいのに、今までの律基の話を聞いていると、なんだか綾世が本当に外国に行ってしまいそうで、怖くて話題を切り出せない。
綾世が居なくなるなんて……そんなの絶対嫌だっ!
「…………」
「櫻木さんに訊かないのかよ?」
黙り込んだ颯斗に、西嶋が小さく耳打ちする。
……訊きたいけど、聞きたくない。
突然、綾世がズカズカと近付いて来た。
颯斗の後ろを通り過ぎ、机の一番奥に居る律基の所でひざまずいて下から俯いた顔を覗き込む。
「具合悪かったのって、律…? 顔色悪いよ、どうした? 熱は? どこか痛いところはない?」
綾世が掛ける心配の声に、律基は俯いたまま黙って首を横に振った。
「…櫻木さんが、居なくなってしまうかもしれないからですよ」
「えっ…?」
一向に確かめようとしない二人に業を煮やした西嶋が、綾世に向かって言った。
背を向けていた綾世は西嶋を振り返る。
「櫻木さんが留学するって話は本当なんですか? 川那辺はそのことが気がかりで、夜も眠れず体調不良なんですよ」
立ち上がって、座る三人を見下ろす綾世の顔は無表情だ。
さっきまで颯斗や律基を気遣う感情がほんの少し見えていたのに、西嶋の言葉で一瞬にして綾世の表情から感情が消えた。
「そんな言い方やめてよっ!」
西嶋に対して口を開いたのは、綾世ではなく律基だった。
椅子から立ち上がった律基は怒っているような、泣き出してしまいそうな複雑な表情をしている。
「…そんな風に言わないでよ……。綾ちゃんが行くって決めたのなら、僕だって…応援したいよ……。でも!綾ちゃんが居なくなっちゃうなんて、やっぱり嫌なんだもん!幹くんみたいに、簡単に『応援する』なんて言えないよ!」
「!?!!?」
突然引き合いに出されて、颯斗は咄嗟に言葉が出なかった。
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