アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
純真メランコリー 36
-
「所詮、俺って道端に転がってるから踏んじゃう石ころ扱いだし…。学校休んでても気にもならない……綾世にとって、そんな程度……」
声に出すと、益々ひどく落ち込んでくる。
「自分が綾世を特別だと思っているように、綾世も俺を特別だと思ってくれているんだって勝手に思い込んでた……」
マークが隣に居るのに。
日本語が理解できないと解っていて……解っているから、弱音を吐けた。
口にした自分の言葉に、えぐられるように胸が痛い。
履いているスニーカーの靴先を睨むように見ていた視界がぼんやりと滲んだ。
やだな…マークさんに泣き顔までは見せられない……。
突然、自販機の方向でした大きな音に驚いて顔を上げる。
その拍子に、颯斗の瞳からぽとりと雫が落ちた。
颯斗は慌てて手の甲で濡れた頬を拭う。
マークが投げたコーヒー缶が自販機横のゴミ箱の淵に当たり、跳ね返り地面に落ちたようだった。
空き缶は、甲高い派手な音をたてながら転がる。
「Oh my god!」
そう呟いたマークが立ち上がり、突然大きな手で颯斗の頭を力強く鷲掴んで撫でた。
頭を押さえ付けられるような状態で、上げた顔が俯きがちになる。
今、まともに顔を見られたくない颯斗にとってはありがたい。
「Hayato! see you,bye!(颯斗!またね!)」
マークはゆっくりとした口調で颯斗の頭上で言葉を発すると、返事も待たずに背を向けた。
転がる空き缶を拾い上げ、ゴミ箱へ放り込むとそのまま出口へと向かって歩き出す。
颯斗はその後ろ姿を、黙ったままで見送った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
114 / 189